ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1307話 せどり

序文・転売

                               堀口尚次

 

 せどり〈競取り、糶取り〉とは、「同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること。また、それを業とする人」を指す。古本用語を元にした「掘り出し物を第三者に転売すること。」を指す言葉。

 一般的にはひらがなで「せどり」と書く。辞書では「競取り」という漢字が当てられているが、元々は「糶取り」という字が使われていた。

「糶取り」の「糶〈ちょう、せり、うりよね〉」とは、「米を売りに出す」の意で、そこから「米の競り売り」や「行商」のことを指す。「糶取り」とは「糶取る」の連用形である。なお、漢字の「糶」は音を表す「䊮」と意味を示す「出」から構成される形声文字で、もともと中国語の「食料を売る」を意味する単語を表記した。

 『書物語辞典〈1936年 古典社〉』によると、語源は不明。漢字は当て字で「糶取」「背取」などと書き、『せどりの營業は、店舗から店舖を訪問して相互の有無を通じて口錢を得るのを目的とする。すなわち甲書店の依頼品を同業者間をたづね歩き値の安きを求め其の間に立つて若干の利得をする〈同書より〉』との事で、書店同士の売買の仲介をする事、またはそれを生業とした者を指す。

 「古書店などで安く売っている本を買い、他の古書店などに高く売って利ざやを稼ぐ」こと、またはそれをする者を指す。同業者の店頭から高値で転売する事を目的に「抜き買い」するため、せどり行為は業界内では嫌われる。一方、本の希少価値にこだわらない、大量仕入れ、大量販売形式の大規模古書店においては、「一度に数十から100冊の本を買ってもらえる」「長期在庫が減る」ということから、せどりが必ずしも嫌われているわけではない。

 古書業界で使われている「せどり」は、業者間の「競り」から来た言葉で「競取り」と書く。古書組合などの業者間の競り売りは、主に束売りで行われるため、欲しい本を競り落とすためには必要のない本まで買わなければならない場合がある。その場合、競り落とした後に必要な本を抜き出し、必要のない本は何らかの形で処分する事になり、結果として「必要な本だけを抜き出す」事になる。そこから「多くの本から必要な本だけを抜き出す」行為を「競取り」と言うようになった。現在の古書業界では店舗を回って在庫を集め、ネットで売りさばく「せどり師」「せどらー」と呼ばれる人々による古本屋も存在する。