序文・猫の尻尾
堀口尚次
ネコヤナギ〈猫柳〉は、ヤナギ科ヤナギ属の落葉低木。山間部の渓流から町中の小川まで、広く川辺に自生する、ヤナギの1種である。
和名ネコヤナギの由来は、やわらかい銀白色の毛に覆われた花穂(かすい)がネコの尻尾を思わせることから、この名がある。別名でカワヤナギ、エノコロヤナギともよばれる。地方によって呼称が異なり、「ネコネコ」「ネコジャラシ」「ネコノマクラ」「ニャンコノキ」といったネコと結びついた呼称や、「イヌコロ」「エノコロ」「インコロ」「イノコロヤナギ」といったイヌと結びついた呼称が知られるほか、東北では「ベコ」「ベコベコ」「ベコヤナギ」といったウシと結びついた呼称が見られる。
因みに花穂とは、穂のような形で咲く花のこと。植物の花序(かじょ)〈枝上における花の配列状態のこと〉のあり方である。穂状花序というものもあるが、それよりは範囲が広く、外見が穂のようなものをこの名で呼ぶことが多い。すなわち、花序の主軸が長く伸び、その軸状に花が並ぶか、あるいは第2の花軸が並んで伸びるにせよ、それが短いために、結果として花がすべて主軸に沿って並んだ状態になったものをこのように呼ぶ。
ナコヤナギは、白銀色の花穂が美しいことから庭木に利用され、花穂は花材として好まれて生け花にもよく用いられる。ネコヤナギを利用した護岸の緑化・環境保全技術が注目を集めている。
【私見】筆者が幼少の頃に流行ったテレビ漫画「天才バカボン」の主題歌に「柳の枝に猫がいる♪だから猫柳~♪」というのがあったが、あながち間違っていなかったのだ。猫の尻尾に似た花穂をもつ柳だったのだから。これでいいのだ。