ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1317話 日本に1台しかないレッドサラマンダー

序文・善なる火を燃え上がらせ悪なる火を消し去る

                               堀口尚次

 

 レッドサラマンダー は、 通常の消防車両では走行が困難な場所で活動を行う関節連結型車両。製造はシンガポールのSTエンジニアリングの子会社で軍需関連企業のSTキネティックス。名称は赤い塗装と、両生類の「サンショウウオ」を意味する英語「salamander」に由来する

 レッドサラマンダーは軍用全地形対応車のブロンコATTCを民間向けにした「ExtremV」である。日本では、消防車両最大手のモリタが販売代理店を担っており、日本の国内法に合わせて小改修を行っている。主に豪雨災害などを想定しと特殊車両である。

 東日本大震災の教訓から、あらゆる災害現場での人員・物資搬送や救助救援活動可能とし、災害対応力を向上させる目的で、2013年に総務省消防庁が導入し、日本の中央かつ災害被害を受けにくい場所であるとして愛知県岡崎市に配備された〈岡崎市消防本部〉。購入費用はおよそ1億円。

 サラマンダーとは、中世錬金術における四大精霊のうち、火を司る精霊妖精。あるいは西洋博物学における、火に耐えて生きる伝説的な動物。サラマンデル、サラマンドラとも呼ばれる。手に乗る位の小さなトカゲもしくはドラゴンのような姿をしており、燃える炎の中や溶岩の中に住んでいる。イモリ類は、火の中で生きることができる生物だと考えられていた。体温があまりに冷たいため火を寄せ付けず、あるいは火を消し去るのだという。薪の隙間に入り込んでいたイモリが、薪ごと火にくべられ、体液が多いためすぐには焼け死なずに逃げ出す様子からそう信じられたという。

 16世紀にパラケルススは四大精霊中の火の精霊をサラマンダーとした。それまで火の精霊は人間型、特に女性の姿の火精という観念もあったが、これ以降はトカゲあるいはサンショウウオの形という考えが一般的になった。ただしパラケルスス自身は四大精霊は人間に近い形と考えていた。象徴としてのサラマンダーは、中世では熱情を抑えての信仰心や、貞節を表していた。また近世にはいると、とりわけ「サラマンドラ紋章」の王たるフランソワ1世に関して、「善なる火を燃え上がらせ悪なる火を消し去る」正義の象徴とされた。