ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1318話 オオカミ少年効果

序文・イソップ寓話

                               堀口尚次

 

 「嘘をつく子供」とは、イソップ寓話のひとつ。ペリー・インデックス210番。一般的には"オオカミ少年"の話として知られている。

 羊飼いの少年が、退屈しのぎに「狼が来た」と嘘をついて騒ぎを起こす。騙された大人たちは武器を持って出てくるが、徒労に終わる。少年が繰り返し同じ嘘をついたので、本当に狼が現れた時には大人たちは信用せず、誰も助けに来なかった。そして村の羊は全て狼に食べられてしまった。

 人は嘘をつき続けると、たまに本当のことを言っても信じてもらえなくなる。常日頃から正直に生活することで、必要な時に他人から信頼と助けを得ることが出来るという教訓を示した寓話であると一般には受け取られている。日本ではこの話を由来として、嘘を繰り返す人物を「オオカミ少年」と呼ぶことがある。

 また誤報を繰り返すことによって、信頼度の低下を引き起こし、人に信じてもらえなくなることを「オオカミ少年効果」という。例えば、土砂災害が予測される地域で避難勧告を出しても、実際に災害が起こらない「空振り」が発生する可能性がある。空振りを続ければ情報の信頼度が低下し、情報を受け取っても住民が避難しなくなることを「オオカミ少年効果」と呼ぶ。

 明治時代にイソップの話とは別に、嘘をついた少年が狼に食われるという訓話が、文部省の小学読本に存在している。『小学読本二之巻』〈田中義廉 明治7年8月改正 文部省、初版明治6年〉では、狼が少年を襲う挿絵とともに「狼のために、噛み殺されたり」となっている。

 日本ではイソップの話であるとして、狼に食べられるのは羊ではなく「羊飼いの少年」とする寓話がいくつも存在する。『ポケット新譯イソップ物語明治43年の岡村盛花堂出版 日野蕨・馬場直美著では、「〈狼が来たと嘘をついた〉平吉は獣の餌食となりました。」と結ばれている。その他、『イソップ物語昭和4年にアルス出版から上梓された新村出著などのほか、八波則吉、波多野勤子、久保喬、立原えりかの児童書でもそのようになっている。

私見】噓つきは泥棒の始まりという。他方、危険度が大きい場合は用心するにこしたことがないという考え方もある。人の意見に耳を傾けることの大切さと、自らが真実を見極めて行動することの重要性も兼ね備えたいものだ。