ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1342話 クリスマスキャロル

序文・賛美歌

                               堀口尚次

 

 クリスマス・キャロルはキャロル〈元来は、踊りのための民謡であったが、宗教的な礼拝の中で歌われて、現在では通常、祝歌、頌歌(しょうか)と訳される賛美歌の一種と考えられている〉の一種で、現代ではキャロルというとクリスマス・キャロルのことを指すことが多い。

 主としてキリスト教文化圏において、イエス・キリストの誕生と関係した内容の歌である。救世主キリストの誕生を祝い、誕生にまつわる様々な場面や逸話を歌詞にした歌をいう。通常世間的には、クリスマス前の時期に歌われ、クリスマス・イブにおいてはとりわけ愛唱されるが、教会では待降節降臨節〉から公現祭〈主の公現・顕現日〉前までの期間に歌われる。

 クリスマス・キャロルは西欧中世にまで遡ることができ、当時の旋律法で造られた曲が現代でもうたわれている。キャロルは元々世俗的な共同体の「祝歌」であり、収穫の季節にうたわれたものや、クリスマスを含め、キリスト教聖日や行事に関連してうたわれたものもあった〈アドヴェント・キャロル、イースター・キャロル等〉。

 キャロルは13世紀には存在しており、合唱歌として歌われてきたが、16世紀の宗教改革において、新教の国々において衰退を見た。しかしキャロルは地方の田園地域などでは継続してうたわれており、やがて19世紀において再びキャロルに対する関心が復活した。またそれと共に、歌詞の印刷出版や新しい作詞などが行われた。

 クリスマス・キャロルはキャロル一般がそうであるように、必ずしもキリスト教会と結びついたものではなく、一般民衆が祝歌・讃歌としてうたっていたものである。その意味では世俗音楽に入るが、宗教的な意味がなかった訳ではない。しかし、宗教改革の推進者であったマルティン・ルターが、クリスマス・キャロルを良きキリスト教徒としての人格の涵養(かんよう)の為、肯定的に捉えたように、キリスト教の側で、教会音楽の一端として取り入れる方向へと進んだ。クリスマス・イブの夜、教会に集まった子供たちが街の家々を訪ねて、クリスマス・キャロルをうたう慣習があり、これを「キャロリング」と言う。これはクリスマス・キャロルが民衆のうたであると同時に、教会に付属する歌としても取り入れられている例だと言える。