ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1372話 9度撃沈発表されたエンタープライズ

序文・不沈空母

                               堀口尚次

 

 エンタープライズ は、アメリカ海軍が第二次世界大戦で運用した航空母艦ヨークタウン級の2番艦。アメリカ海軍においてエンタープライズの名を受け継いだ艦としては、七隻目にあたる。艦名の “Enterprise” は、「冒険心」「困難への挑戦」「進取の気性」「企業」といった意味を持つ。

 排水量2万トンと空母としては中型でありながらも、その戦いぶりから “ビッグ E”〈偉大なE〉の愛称で親しまれ、大戦中に大小15回の損傷を受けながらも、高いダメージコントロール能力と幸運により沈まず大戦を生き抜いた。その外 “ラッキー E〈幸運なE〉”、“グレイゴースト〈灰色の亡霊〉”、“ギャロッピングゴースト〈駆け回る亡霊〉” の愛称もあった。ビッグEやラッキーEの “E” には、“Enterprise”〈冒険心〉の頭文字の意味と共に “Excellence”〈優秀〉、“efficient awards”〈能率の良い艦艇に授与された賞〉の頭文字の意味も含まれていた。

 「エンタープライズ」は太平洋戦争開戦前に建造され、終戦まで無事に生き残った3隻の正規空母〈艦隊型空母〉のうちの一隻であり、太平洋戦争中の主要な海戦のほぼ全てに参加して数多くの戦果をあげ、大戦中で最多の20の従軍星章〈バトルスター〉を得た。また、空母として初めて大統領部隊感状を受賞、後に海軍部隊褒章も受賞し両方を受賞した唯一の艦艇となった。それ以外でもイギリス海軍から他国籍の海軍艦艇として唯一、英国海軍本部ペナントを受章するなど第2次世界大戦でもっとも勲章を受けたアメリカ海軍の軍艦となった。

 「エンタープライズ」は大戦を通して最も多く改装を受けた空母にもなった。他に日本軍の大本営発表によって9度撃沈発表がなされており、敵国により行われた虚偽の撃沈発表回数において史上最多の記録も持つ

 日本海軍による真珠湾攻撃〈現地時間12月7日〉は、「エンタープライズ」不在の港を攻撃する形になった。真珠湾攻撃当日、普段「エンタープライズ」が使用していたフォード島のF-11埠頭は標的艦「ユタ」 が停泊していたが、南雲機動部隊の九七式艦上攻撃機により撃沈された。ただ大本営発表ではエンタープライズ航空母艦」を1隻撃沈したと伝えられた