ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1382話 不発弾処理の問題

序文・処理費用

                               堀口尚次

 

 不発弾は、起爆に関する機構に何らかの不具合があって爆発せずにある砲弾などの弾薬類の総称である。不発弾は、火工品である弾薬が正常に機能しなかったという点で、広義の不良品である。元来、人や物品、施設に損害を与えるのが目的である以上、一定の破壊力を有しているため、後々になって何らかのきっかけにより動作した場合には、本来の目標とは異なる対象を破壊してしまうこともあり、特に戦闘が終結したあとに問題とされる。

 実際に不発弾処理作業が行われる場合、災害対策基本法第63条に基づく警戒区域が設定され、周辺を封鎖し、安全を確保して行われる。封鎖地域への立ち入りは禁止され、地域内の住民や病院に入院中の患者などは地域外への避難を余儀なくされる。特に都市部の幹線道路や鉄道路線が封鎖地域にかかる場合、道路の通行止めや列車の運行が中止されるため、影響が大きい。そのため通勤・通学などへの影響が少ない日曜日に行われることが多い。なお、撤去後の弾薬については、かつては海中投棄も行われていたが、2007年以降、海洋汚染防止のため、全て陸上処理されることとなった。

 沖縄県の防災危機管理課によると、不発弾の爆発で生じた民間人の被害に対する国からの補償は、補償金ではなく「見舞金」という形で存在している。2009年1月に糸満市で起きた不発弾爆発事故をきっかけにできたもので、「沖縄特別振興対策調整費」の一部として、条例に基づき死亡の場合1,000万円、負傷の場合は程度によって750万-314万円を沖縄県が支払うことになっている。

 他方で、不発弾の処理に掛かった費用については、負担先を規定する法令が存在せず、このため処理費については、不発弾が見付かった土地の所有者に対して求めるケースが多い。これに関連して、2015年5月9日に大阪市浪速区日本橋で行われた不発弾処理で、不発弾の発見された土地の所有者が、大阪市に対し「不発弾処理は戦後処理の一環であり、行政が責任を負うべきである」として、大阪市を相手取り大阪地方裁判所に、処理費の返還を求める訴訟を提起し係争中である。また、この訴訟に絡み、大阪市側も日本政府に対し「戦後処理は国の責任である」として訴訟参加を求めたものの応じなかったため、土地所有者は国を相手取り同年12月9日に新たに同地裁に訴えを起こした。2018年2月、訴訟は所有者側の敗訴となった。