ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1395話 軽便鉄道

序文・ナローゲージ

                               堀口尚次

 

 軽便(けいべん)鉄道とは、一般的な鉄道よりも規格が簡便で、安価に建設された鉄道である。

 軽便鉄道は、建設費・維持費の抑制のため低規格で建設される。軽量なレールが使用され、地形的制約の克服に急曲線・急勾配が用いられ、軌間狭軌が採用されることが多い。このため、運行時は最高速度が低く輸送力も小さく、軌間が違う場合は積み替え・乗り換えの不便が生じる。産業の未成熟で限定的な輸送力しか必要としない地域に建設される事例が多い。

 日本における軽便鉄道は、法規的には「軽便鉄道」に基づいて建設された鉄道を指すが、一般的には国鉄線や軌道法に基づいた軌道線をふくめて、軌間1067mm〈3フィート6インチ〉未満の営業鉄軌道を軽便鉄道とする。広義には軌間1067mm未満の森林鉄道・殖民軌道・鉱山鉄道など、鉄道法規の規定によらない低規格の鉄道も含まれる。

 軌間は、日本では762mm2フィート6インチナローゲージの事例が多いが、この他に600mm、あるいは610mm〈2フィート〉、九州北部で1930年代まで盛んに使われた914mm〈3フィート〉の例があり、それ以外の軌間の採用例も僅少ながら存在する。

 また、軽便鉄道には軌間の規定がなかったため、同法によって建設された路線には1067mmや1435mm〈4フィート8 1/2インチ〉の路線も存在した。例:新宮軽便鉄道〈1435mm〉、国鉄の軽便線〈1067mm〉など

 輸送の実態として、明治期に開業した可部線の例では、立てば頭がつかえるようなマッチ箱式の小型客車を使用、乗客が多ければ起動できずに皆で後押しをして動かした。また、乗客が列車の進行中に降りて用便を済ませても駆け足で追いつくといった話も伝わるほど、輸送機関としては貧弱なものであった。

 現存する軽便鉄道の規格のままの営業鉄道は、四日市あすなろう鉄道内部・八王子線三岐鉄道北勢線黒部峡谷鉄道が残るのみで、すべて電化路線である。

私見】筆者は、三重県四日市あすなろう鉄道内部・八王子線の全線及び、三岐鉄道北勢線の全線を乗車体験している。いずれもナローゲージであり、車両を目の前にすると、本当に小さく可愛らしく感じ、哀愁のある列車であった。

                ※筆者撮影 三岐鉄道北勢線とあすなろう鉄道