ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1415話 遠江と河豚

序文・三河のとなり

                               堀口尚次

 

 遠江(とおとうみ)は、かつての令制国遠江国およびその後の浜松県、そしてその領域にほぼ相当する現在の静岡県西部地方を指す時の呼称。遠州(えんしゅう)とも呼ばれる。

 遠江国は、日本の地方行政区分である令制国の一つ。東海道に属する。現在の静岡県西部、及び中部の一部〈大井川の旧流である栃山川以西〉。

 古くは「遠淡海(とおつあはうみの)国(くに)」と表記された。また飛鳥京跡苑池遺構から出土した木簡には「遠水海国」という表記がされている。「遠淡海」とは都〈当時の奈良〉から見て遠くにある淡水湖という意味であり、近江国の「近(ちかつ)淡海(あはうみ)」の琵琶湖と対比される。この「遠淡海」に関しては、一般的に浜名湖を指すとされるが、一方国府のある磐田湖〈大之浦〉を指すとする説もある。ただし大之浦は名称の通り浦であり、淡水湖でないことに留意される。当時の浜名湖は淡水湖であったが、明応7年に起きた明応地震やそれに伴う津波により、浜名湖と海を隔てていた地面の弱い部分〈砂提〉が決壊し現在のような汽水湖となった。

 「とおとうみ」とは、ふぐの身と皮の間にある「ゼラチン質」を多く含んだ皮膜のことで、霜降りをしてから細く切り分けて、ふぐ刺し〈てっさ〉に添えたり、小鉢料理として盛りつけます。語源は、ふぐの身皮みかわに接する部分ということから、愛知県東部の三河(みかわ)のとなりなら、静岡県西部の遠江(とおとうみ)だろうという遊び心でつけられた名称

 漢字で「河豚(ふぐ)」と表記するが、「河」と書くのは中国で食用とされるメフグが河川など淡水域に生息する種であるためで、また、このメフグが豚のような鳴き声を発することから「豚」の文字があてられているとされる。