序文・越後屋~おぬしも悪よのぉ~
堀口尚次
三越は、三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越伊勢丹が運営する呉服店を起源とする日本の老舗百貨店である。延宝元年創業。また、株式会社三越は、2011年3月31日までこれを運営していた企業である。戦前の三井財閥及び、現在の三井グループの源流企業であった。
商号の「三越」は、三井財閥の創業者である三井家の「三井」と創業時の日本橋の呉服店「越後屋」からとったもので、1904年に「合名会社三井呉服店」から「株式会社三越呉服店」へ改称した際からのものである。三越日本橋本店は日本の百貨店の始まりとされる。1935年に竣工した日本橋本店の本館は、国の重要文化財に指定されている。現在の同店のキャッチフレーズは、「飾る日も 飾らない日も 三越と」「This is Japan」。
江戸時代の延宝元年に江戸本町一丁目14〈後の駿河町、現・東京都中央区日本橋室町の一部〉において、「店前現銀売り(たなさきげんきんうり)」や「現銀掛値無し(げんきんかけねなし)」「小裂(こぎれ)何程にても売ります〈切り売り〉」など、当時では画期的な商法を次々と打ち出して名をはせた、呉服店の「越後屋」〈ゑちごや〉として創業。現在では当たり前になっている正札販売〈商品に値札を付ける〉を世界で初めて実現し、当時富裕層だけのものだった呉服を、ひろく一般市民のものにした。1928年には「株式会社三越」となった。店舗入り口にあるライオン像が特徴的。
「三越」改称の案内の際に「デパートメントストア宣言」を行い、そのことを以て日本での百貨店の歴史が始まりとすることが多い。また三井財閥〈現三井グループ〉のルーツとなった「越後屋」の呉服店事業を引継いだため、「三井財閥〈現三井グループ〉の礎を築いた企業である」とされることも多いが、企業としての三越としてみるならば、三井の事業から呉服店部門のみを「合名会社三井呉服店」として分離したのが始まりである。