序文・マスターオブニンジャ
堀口尚次
五郎丸歩は、日本の元ラグビーユニオン選手、スポーツ科学者。学位は修士〈スポーツ科学〉〈早稲田大学・2023年〉。
プレースキックを蹴る前のルーティンの1つに両手を組み精神統一を図るものがあるが、これは元イングランド代表のスタンドオフジョニー・ウィルキンソン〈2003年ワールドカップ優勝メンバー及び大会得点王〉に倣(なら)っている。五郎丸の場合は伸ばした左右の人差し指の先を合わせ、右手の中指、薬指も立てて拳に被せ気味にする独自の物となっている。キックする時にはボールを2回回して芝に2回軽く叩いてセット。3歩下がって2歩左に移動、ポーズをした後に右足でキックする。このポーズが「五郎丸ポーズ」と呼ばれるようになり、2015年の新語・流行語大賞にもノミネートされ、「五郎丸〈ポーズ〉」としてトップテンに選出され、「五郎丸」として2015年度ネット流行語大賞金賞〈第1位〉を受賞した。また、このポーズが日本古来の忍者のイメージを思い起こさせるとして、同年12月16日には日本忍者協議会から「マスター・オブ・ニンジャ」に認定された。
なお、2017年7月の時点でルーティンを変更し、五郎丸ポーズは省略されるようになった。これは五郎丸が移籍したRCトゥーロンに所属するキッカーを見た際に、全員すごくシンプルに蹴っていると感じ、必要ない動作とかをどんどん削ってよりシンプルにしようと思い、今までのルーティーンをあえて変えたそうである。その後キックの成功率は80%であったが、新たなルーティーンを採用してからは成功率が83%に向上した。尚、2014年のゴール成功率81.4%を記録しているが、2015年のワールドカップでは、85%の成功率を目標に掲げていた。
【私見】得てして人は、成功体験を継承したいものだ。スポーツ選手が行うルーティンの動作には、そうした概念が根底にあることは確かだろう。また日本古来の迷信にある「験(げん)を担ぐ」思想も相まっている様に思う。しかし本当の賢者は、過去の成功に囚われることなく、絶え間ない努力を積み重ねことで成功体験を継承しているのだと感じた。