序文・狐は商売繁栄を斉す神の使い
堀口尚次
愛知県知多郡武豊町にある「日油株式会社 玉福稲荷神社」は、全国でも有数の立派な社内神社。会社敷地内にあるため、かつては一般人は参拝できなかったようだが、筆者が訪れた2025年7月の時点では、会社敷地と隣接しているものの、自由に参拝することが出来た。日油株式会社は、化学工業メーカーとして昭和12年の創業したが、その前身の日本油脂株式会社は大正8年に設立され、当時の国鉄武豊線から延伸された日油引込線で「ダイナマイトの運搬」も行っていた。
以下は神社境内にあった「玉福稲荷神社の由来」。
『当神社は大正十一年に建立されました。当時この地は原始林の生い茂る野生動物の天国でしたが、大正八年から始まった当工場の前身である。帝国火薬工業株式会社 武豊事業所の建設に追われて、多くの動物たちは他の山へ移動しました。しかし一つの穴だけは毎朝新しい足跡がついており、土工達が生け捕ろうと穴を煙で燻しました。中には自分の体で穴を塞いで死んだ親狐と、生き残った二匹の子狐がおりました。第二代所長 有本 完はこの話を聞き、狐は商売繁栄を斉す神の使いであると信心しておりましたから、子狐の牡に玉、牝に福と名付けて大切に育て、広き賛同者と多大な寄進を戴き、この地に稲荷神社を建立し、大正十一年十一月七日、京都伏見稲荷神宮による御霊鎮座の祭典が盛大におこなわれました。以来、工場は庇護により大災もなく今日に至っております。毎年十一月第一週休日前日に祭礼を催し、工場の繁栄と安全を祈願している他、年末年始のお参りも足繁くおこなわれております。』
但し残念ながら、2000年代に入ってから、事故は頻繁に発生している。
・2000年8月1日 - 愛知事業所武豊工場で無煙火薬7.7tが爆発。現場より1kmの範囲で特に窓ガラスの破損と破片による負傷者多数。・2005年8月13日 - 愛知事業所武豊工場で湿ニトロセルロース〈綿薬〉の火災・爆発。休業中のため負傷者なし。・2009年11月5日 - 愛知事業所武豊工場でエアバッグ用点火薬製造工室の爆発。従業員1名死亡。・2009年12月4日 - 愛知事業所衣浦工場で有機過酸化物製造工室のポンプ内熱分解。従業員1名負傷。・2023年9月14日 - 愛知事業所武豊工場でタンクの配管が破裂。工場は稼働中であったものの負傷者なし。