ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1473話 喫水と乾舷

序文・氷山の一角

                               堀口尚次

 

 喫水(きっすい)または吃水とは、船舶水上にある際に船体が沈む深さ、すなわち船体の一番下から水面までの垂直距離のことである。

 喫水は船舶の浮き沈みの程度を表し、船舶の積荷、湾岸での安全な航行を確保する上で重要な指標である。このため、湾岸や運河では潮の高さによって入出港が可能な喫水制限許容喫水〉が設けられる。水面に接する分界線のことを喫水線という。船の積み荷を増やすと喫水は深くなり喫水線も上昇するが、その分沈没する危険性が高まるため、船に載せられる積荷の限界を満載喫水線という。

 水域施設、係留施設等の港湾施設における岸壁水深に大きく左右され、後から増深することが難しくなる。よって、積載能力の大型化に伴って船舶の喫水は深くなり、湾岸設備の水深も寄港する船の喫水データに従って設計される。

 乾舷(かんげん)は、船舶において水面から上甲板までの距離を言う。

乾舷が小さいと船の上まで波が届きやすくなり、甲板上での人の行動が困難になったり、船上開口部からの浸水により沈没する危険が高まったりするため、船の航洋能力と関わりが深い要素である。外洋で活動する船は乾舷が大きい。一方で、波が無く穏やかな内水域で使用する船の場合、乾舷は小さくても問題が無い。むしろ内水域は水深が浅く喫水が浅い船体となることから、転覆の危険を生じるトップヘビー〈重心が高い位置にあり復原性が低下している状態をトップヘビーという。船舶においては積荷などを高い位置に積載することでトップヘビーとなることがある。トップヘビーに対して、重心が低く復原性が高い状態をボトムヘビーという〉を避けるため、乾舷を小さく設計する。

 乾舷が大きいということは、予備浮力が大きく多少の浸水では沈没しないということも意味する。適正な予備浮力を確保して船の安全な運行を行うため、十分な乾舷が維持できる位置に満載喫水線が規定され、それを超えて船体が沈みこむほど乗客や積荷を載せることは制限される。

 船体の中央部の乾舷は小さな値としつつ、波を切る船首部分や船尾部分だけ甲板を高い位置にすることで、航洋性能を向上させる船体設計の手法がある。船首部の甲板に段差を付けて一段高くした船首楼や、甲板を反り上がらせたシアー〈舷弧〉を施すといった方法が見られる。