ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1493話 領事裁判権

序文・不平等条約

                               堀口尚次

 

 領事裁判権とは、外国人がその在留国において本国の領事による裁判を受ける権利をいう。日本が江戸時代に締結した不平等条約などにみられる。

 日米修好通商条約第六条によれば「日本人に対して法を犯したアメリカ人は、日本にあるアメリカの領事裁判所で裁き、アメリカの法によって罰する。アメリカ人に対して法を犯した日本人は、日本の役人により日本の法で罰する」「商取引についても同様に扱う」とする条項が含まれた。

 不平等条約における領事裁判の管轄と適用法規については実際には必ずしも明瞭でなく、領事裁判権治外法権はしばしば混用されている。近代の意味における国家や国民の概念が明瞭でなく、また外国人の国籍確認が不分明であるにもかかわらず、条約において領事裁判条項は容易に規定され、のちに不平等条約として問題となるのが通例であった。

 外国諸法に関する知識や判例などの情報がない状況下で行われる領事裁判は正当性のない判決がしばしば下された。本来は領事警察権が及ぶ領域を想定したものであっても当該国の全域で適用され、二重法体系を生み当該国の主権を奪う手段となった。

 日本の場合、いかなる条約においても日本に在住する外国人に治外法権を認めたことはない。認めたのは日本人に対する外国人の犯罪に対する裁判をそれぞれの国の在住領事に委ねるということだけであった。これが治外法権であるかのように誤解され、外国人がすべて課税を免除され、日本の一切の行政権に服従しないようになったのは外国人の横暴とこれを黙認して既成事実化した日本人役人の怯懦のためであった。領事裁判権については締結の当時それが不平等条約であり、将来どのような惨禍をもたたらすかについて全く理解されておらず、むしろ日本側は進んで歓迎さえしたもので、ハリスをして意外の思いをさせるものであった。

 日本では1858年に締結された日米修好通商条約に『第6條  日本人に對し法を犯せる亞墨利加(あめりか)人は、亞墨利加コンシュル裁斷所〈領事裁判所〉にて吟味の上、亞墨利加の法度を以て罰すへし。亞墨利加人に對し法を犯したる日本人は、日本役人糺の上、日本の法度を以て罰すへし。』とあり、その後安政年間に締結した安政五カ国条約にすべて領事裁判権の定めがある。