序文・アベノミクス
堀口尚次
トリクルダウン理論とは、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富がこぼれ落ち、経済全体が良くなる」とする経済理論である。18世紀の初頭に英国の精神科医であるマンデヴィルによって初めてこのような考え方が示され、その後の古典派経済学に影響を与えた。均霑(きんてん)理論とも訳される。
「トリクルダウン」は英語で「徐々にあふれ落ちる」を意味し、大企業や富裕層の支援政策を行うことが経済活動を活性化させることになり、富が低所得層に向かって徐々に流れ落ち、国民全体の利益となる」とする仮説である。「トリクルダウン」という名称は、ウィル・ロジャースの発言に由来するとされる。
新自由主義の理論によれば、ジニ係数〈データの不均等さを表す統計値〉が上昇したとしても、自由競争と国際貿易によって、貧困層も含む全体の所得が底上げされると考えられていた。
2014年の新語流行語大賞の候補50語に「トリクルダウン」が選出された。アベノミクスがトリクルダウンであるという批判がある。また、アベノミクスが〈また条件付きで〉トリクルダウンである、と認める識者もいる。安倍総理のブレーンである経済学者の浜田宏一は、アベノミクスの第1期についてはトリクルダウンであるのは事実であり、まず輸出産業が良くなり、その後株価の上昇によって最初に利益を受けたのは外国人を含めた金持ちの投資家だった。次に時間外賃金の上昇といった形でパート・アルバイトの労働市場に波及した。単純労働者の賃金が上がっていくような技術進歩の過程にないためトリクルダウンの成果は遅いが、日本も明るさが見えてきて庶民にも経済成長の恩恵が降りてきている。つまり、第1の矢によるトリクルダウン効果がより具体的に現れて国民生活を潤していると指摘している。
