ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1474話 トリアージ

序文・選別と優先

                               堀口尚次

 

 トリアージは、多くの傷病者が発生している状況において、傷病の緊急度や重症度に応じた優先度を決めること。中国や台湾など漢字圏では、検傷分類と言われる。救急事故現場において、患者の治療順位、救急搬送の順位、搬送先施設の決定などにおいて用いられる。識別救急とも呼ぶ。トリアージは病院の救命救急部門(ER)受付や、救急通報電話サービスでも行われている。語源としては、「選別」を意味するフランス語トリアージとする説が有力である。

 「トリアージ」は災害医療等で、大事故、大規模災害など多数の傷病者が発生した際の救命の順序を決めるため、標準化が図られて分類されている。最大効率を得るため、一般的に直接治療に関与しない専任の医療従事者が行うとされており、可能な限り何回も繰り返して行うことが奨励されている。その判断基準は使用者・資格・対象と使用者の人数バランス・緊急度・対象場所の面積など、各要因によって異なってくる。例えば玉突き衝突事故等の、一般的に複数個の救急隊が出場する事案では、隊と隊の間の意思疎通・情報共有のためにもトリアージ・タッグが使用される。

 医療体制・設備を考慮しつつ、傷病者の重症度と緊急度によって分別し、治療や搬送先の順位を決定することである。助かる見込みのない患者あるいは軽傷の患者よりも、処置を施すことで命を救える患者を優先するというものである。日本では、阪神・淡路大震災以後知られるようになった。平時では最大限の労力をもって救命処置された結果、救命し社会復帰し得るような傷病者も、人材・資材が相対的に著しく不足する状況では全く処置されず結果的に死亡する場合もあることが特徴である。

 日本では明治21年森鴎外がヨーロッパからトリアージのシステムを持ち帰っていた。しかし、明治22年に陸軍衛生教程が編纂された時に、日本ではトリアージの導入を行わなかった。森鴎外や石黒忠ら当時の軍医のトップたちは、トリアージ赤十字国際条約で禁止されている「差別的治療」に当たるとして日本では導入しないことにした。しかし、野戦病院のシステムはトリアージを行うことを前提に構築されているため、トリアージ無しではシステムが機能しなくなるという問題があった。そのため、日本では「分類はするが優先順位はつけない」という欧米のトリアージを変形させた独自の手法になった。