序文・隠された意図
堀口尚次
囲碁において捨て石とは、意図的に相手に取らせることで利益を得るために打たれる石のことである。序盤からヨセの段階まで、ゲームの進行の各段階においてしばしば用いられる手筋であり手段である。
手筋とは囲碁用語の一つで、通常より大きな効果を挙げることのできる着手のことである。多くの場合、平凡な発想では達し得ない、やや意外性を含んだ効果的な手を指すことが多い。単に「筋(すじ)」と呼ぶこともある。
取らせる石があらかじめはっきりしているような場合もある。石を取らせることによって相手を強化してしまう反面、自分も強くさせようという打ち方。「2子にして捨てよ」という格言があり、相手がわずかな石を取ることにもたついている間に、自分はもっと効果的な着手をしようという発想である。
囲碁の対局では、布石の段階が終わった時点からは、「自身のもつ模様を広げる」「相手の弱い石を攻める」などの構想を持って打ち進める。相手の弱い石を攻める場合は、キリを入れるなどして、相手の石をとことん弱くしていく方法がよく取られる。この際、「キリを入れた石」など、相手の石を攻める際に重要だ、とされる石を特にカナメ石と呼び、双方の攻防の争点となりやすい。また、対局が進むにつれて「さほど重要ではない点に自分の石が残っている」ケースがあり、この「邪魔な石」を利用しながら攻めるぞ、と相手を脅しながら打つ手段が成立する。この際の「邪魔な石」を、特にカス石と呼び、このような打ち方を俗に「カス石を取らせて打つ」などと表現する。
上記の囲碁用語から転じて、今は無駄あるいは損に見える、将来の利益を期待して行う投資や行為のことを、「捨て石」と比喩する。
