ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1520話 高速道路無料化

序文・民主党マニフェスト

                               堀口尚次

 

 民主党は、「地方を活性化するとともに、流通コストの削減を図る」ことを最大の目的として、2003年の第43回衆議院議員総選挙以降一貫して「高速道路無料化」をマニフェストに掲げている。

 これらのマニフェストの中で特に重要なのは、2009年8月の第45回衆議院総選挙マニフェストである。このなかの「マニフェスト政策各論」の項番30は、次のように述べている。『高速道路を原則無料化して、地域経済の活性化を図る【政策目的】流通コストの引き下げを通じて、生活コストを引き下げる。産地から消費地へ商品を運びやすいようにして、地域経済を活性化する。高速道路の出入り口を増設し、今ある社会資本を有効に使って、渋滞などの経済的損失を軽減する。【具体策】割引率の順次拡大などの社会実験を実施し、その影響を確認しながら、高速道路を無料化していく。【所要額】1.3兆円程度 マニフェストの3ページには、工程表が示され、高速道路の無料化については、2010年度と2011年度は段階的実施とされて斜めの線で表現され、2012年度からは完全実施のための必要額1.3兆円が明記されている。このため「2010年-2011年度の斜線の表現の意味」と「マニフェストは事実上修正されたのではないか」について、馬淵澄夫国土交通副大臣が、2010年8月2日の記者会見において、記者から問われる事態となっている。

 上記の複数のマニフェストによると、維持・管理および債務返済の財源としては、「道路予算の一部振り替えと渋滞・環境対策の観点から例外的に徴収する大都市部の通行料でまかなう」としている。なお、2003年6月に菅直人民主党代表〈当時〉は、無料化の財源の私案として「車1台につき年5万円の課税」を一例として挙げたが、マニフェストに明記されたことは一度もない。

 自民党民主党の無料化案は非現実的であると一蹴している。しかし一方、麻生内閣は2009年から「生活対策」に基づき、一定期間の高速料金の引き下げ〈「高速上限1,000円」など〉を開始している。2009年の衆議院議員選挙において、高速道路無料化を公約に掲げた民主党が圧勝した。無料化が実現すればアメリカのフリーウェイやドイツのアウトバーンアウトバーンは大型車は有料〉などの先進国の主要道路と同様に、基本的に車種を問わずに無料となる予定だった。

 しかしながら、JR各社をはじめとする鉄道やバス、船舶業界からの反発が根強い上、民主党が連立政権を組む社民党は「〈ガソリン税暫定税率撤廃と同様に〉地球温暖化対策に逆行する上、余計な財源が必要」として、民主党に再考を求めており、また、行政刷新会議の中でも事業仕分けリストの中に取り上げられ、更に民主党の支持基盤であるJR総連・JR連合からも鉄道利用者の減少→整理解雇の危惧から見直しの声があり、完全実施に向けては業界やユーザーからの理解が必要とも言える。

 東名高速道路の建設開始当初、高速自動車国道日本道路公団〉は、原則として建設時の借入金が返済されるまで無料開放をしないとの位置付けであった。このため各路線ごとの借入金がそれぞれの路線の収益により返済された後は、無料開放される予定であった。だが田中角栄内閣によって、高速料金全国プール制が導入され、全国の高速道路の収支を合算することとなったため、東名高速をはじめとする利用者の多い路線の収益で、他の赤字路線の借入金を返却する状態となった。赤字国債によって建設費を賄ったこともあり、無料化は度々先送りされた。

 2002年8月7日に、道路関係四公団民営化推進委員会は高速道路の無料開放を断念し、日本道路公団民営化に伴う高速道路の恒久有料化を決定した。この委員会決定通りであれば、高速道路の無料開放の可能性は消滅するが、最終的には道路公団民営化の方針で、2005年の民営化後2050年までに借入金を返済し、日本高速道路保有・債務返済機構を解散することが日本高速道路保有・債務返済機構法で義務化され、最終的には高速道路の全面無料化を実施し、残った借入金を税投入で償却する事とした。民営化時の借入金は、約40兆円に相当すると言われている。

 しかし、「2050年」とされた期限は笹子トンネル天井板落下事故を機に、巨額の更新費を確保する必要があるとして2014年に「2065年」に延長された。さらに2021年には再延長するべきとの答申案が出され、2023年に「2115年」に再延長された。

 なお新直轄方式高速自動車国道や、一部の高速自動車国道に並行する一般国道自動車専用道路、一部の地域高規格道路、その他の自動車専用道路として、無料開放されている路線もある。