ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1567話 女性は土俵から降りてください

序文・伝統と緊急事態の狭間

                               堀口尚次

 

 「女性は土俵から降りてください」は、2018年4月4日、日本の京都府舞鶴市で開催された「大相撲舞鶴場所」において、一人の日本相撲協会の行司によって行われた発言である。舞鶴市長が土俵の上であいさつを述べていた最中、クモ膜下出血を発症して意識を失い、転倒した。そこへ観客として会場に居合わせた女性看護師たちが駆けつけ、ただちに救命処置を行った。

 この女性たちに対し、ある日本相撲協会の行司が「女性は土俵から降りてください」「男性がお上がりください」との場内放送を行った。さらに、土俵下にいた相撲協会員が女性たちへ直接「下りなさい」と指示したという。この対応に「女性差別だ」「人命軽視ではないか」などの批判が集まり、同協会は「人命にかかわる状況には不適切な対応」であったとして謝罪した。このことをきっかけに、大相撲における『女人禁制』という伝統と、女性差別とをめぐって議論が起こった

 女性たちが土俵から降りたのち、土俵には大量のがまかれた。この塩まきの意図について、現場では一切の説明は無かったことが臆測を呼んだ。同協会の広報部長は、女性が土俵に上がれないことについて、「差別のかけらもない」と否定した。「いつの間にか話がすり替わっている」「スー女と呼ばれるファンも増えて、女性には感謝しかない。今回のような緊急事態と、女性を土俵に上げる、上げないの話とは別」と述べ、「大相撲の伝統を守るスタンスは変わらない」と表明した。また「こういった緊急事態が、またいつ起こるかもしれないので、場内アナウンスの指導もしていかないといけない。緊急時のマニュアルも作らないといけないし、かといって緊急時もそのマニュアル通りにやればいいというものでもない。緊急のことで経験を積めるものでもないので、臨機応変に対応できるようにする必要がある」などと話した。

 事件直後、相撲協会関係者によって土俵に大量の塩がまかれたことに対し「女性が土俵にあがったことに対して塩をまいたのか」などと誤解や非難があったことについて、「塩をまいたのは、力士に骨折や大きなけががあった際の通例で、女性が土俵に上がったこととは関係はない」と12代芝田山は説明している。

私見】伝統〈しきたり〉と現代社会の男女平等は両立しない。伝統を重んじる大相撲と、緊急事態に対応した女性看護師の両者にエールを贈りたい。