序文・神事だけに
堀口尚次
不浄負けとは、相撲の取組中に廻しの前袋が外れて陰部が露出することであり、露出した側の力士が即座に反則負けとなる。相撲の勝敗を決定する要素の一つではあるが、「不浄負け」は通称であり、現在大相撲で82手が定められている決まり手には含まれず、また勇み足や腰砕けのような5種の勝負結果〈非技〉の中にもない。日本相撲協会寄附行為施行細則附属規定【勝負規定】第16条『前褌がはずれて落ちた場合は、負けである。』に基づき反則負けが記録される。
ただし、勝負が着いて行司が軍配を上げた後に露わになった場合はこの限りではなく、行司軍配に基づく勝敗が優先される。実際に明治期には、相手を土俵に転がすのとほぼ同時に前袋が外れた力士が行司軍配によりそのまま勝利した例がある。前例は不明であるが、制限時間前に露わになった場合も当該取組の勝敗には影響しない。相手力士の前立褌を掴んだり、指を入れて引いたりして不浄負けにしようとする行為は禁じ手であり、行った力士は反則負けとなる。 また、負傷などの理由を除き、下半身の露出を防ぐために廻しの下に下帯などを着用することは認められていない。これはアマチュア相撲の国内大会でも同様である。なお、同規定に基づく反則負けが適用される条件は「取組の途中に」「相手の故意以外の原因で」「前袋が外れて」「局部が露出する」ことであるため、単に廻しの結び目がほどけただけだったり、露出した箇所が臀部のみだったりした場合はこの限りではない。通常、廻しは何重にも硬く締めているため、実際に起きることはほとんどない。また、取組中に廻しが緩んでいることが確認でき、勝負を止められる場合は、行司がいわゆる「廻し待った」をかけ、両力士に土俵上で組み合ったまま動きを止めさせ、その間に行司が締め直すことになっている。平成12年 5月場所中の三段目の取組、朝ノ霧—千代白鵬戦で発生。朝ノ霧の廻しが外れて反則負けになった。戦後唯一の例で、本場所に限れば83年ぶりの珍事であったため、日本国内だけでなく海外にも打電され、ニュースになった。翌5月14日発売の日刊スポーツ朝刊では、この不浄負けを東京地区スポーツ紙5紙の中で唯一1面で報道。「大相撲83年ぶり事件 モロ出し」と見出しを打った上で、審判委員たちの「見えてる見えてる」の叫びを赤明朝体文字で大きさを変えて載せるなど、この日の日刊スポーツの売切店が多数あったほど強烈なインパクトを残した。
