ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1581話 代用監獄の問題点

序文・警察署併設の留置所

                               堀口尚次

 

 代用刑事施設とは、刑事訴訟法の規定により勾留される者を刑事施設に収容することに代えて、留置施設に留置することができる制度をいう。

 代用刑事施設は、もっぱら代用監獄と呼称されてきた。しかし、監獄に関して定めていた監獄法が廃止され、刑事収容施設法が立法されたことにより、法律上の正式な名称は、「代用監獄」から「代用刑事施設」へと改められた。学界や実務では、引き続き、代用監獄や在監者といった名称が使用されることもある。

 日本の刑事訴訟法は勾留を刑事施設においてすることと定め、同時に刑事収容施設法第15条には「刑事施設に収容することに代えて、留置することができる」という定めがあることから、被逮捕者や被勾留者は留置施設に収容することができる。被疑者は、経済等被疑事件の検察庁による独自捜査事件の被疑者を除き、ほとんどが刑事施設ではなく留置施設に拘禁されている。これには、留置施設は、警察署に近い・内部にあり捜査に際しての利点が多いという捜査機関の事情がある一方、刑事施設は数、収容力に限界があるため、全ての被疑者・被告人を刑事施設に収容することは不可能であるという事情もある。刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律による「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」への改正により、留置施設制度が改めて法定された。

 警察機関の施設内部で被疑者を拘束して、取調べを行うこと自体は諸外国でも行われている。ただし、警察署の施設内部で被疑者が拘束されうる期間は、先進国の中では日本とイギリスが際立って長い。日本の場合は、勾留期間が通常の事件であれば10日間、最長で20日間まで延長でき、取調受忍義務も拡大解釈されている。そのため、被疑者が警察官の直接管理する代用刑事施設留置場〉に収容されることにより、自白獲得のための長時間の取調べが連日に渡って行われるだけでなく、自白しない被疑者の待遇を変化させるなどの人権蹂躙(じゅうりん)によって、虚偽の自白の誘発、ひいては冤罪や人質司法、強引・違法な取り調べ、拷問、長期勾留、長期間の面会禁止、命に関わる持病がある被疑者に医療を受けさせない嫌がらせ、黙秘権、秘密交通権を侵害する原因となっているとの批判が古くからなされてきた。

 自白の強要や拷問を行うことは日本国憲法第38条1項2項や国際人権条約に違反する行為である。日本で代用刑事施設代用監獄〉という言葉が批判的に使われる際には、被疑者を拘束して取調べを行う場所が、警察施設の内部であるか否かだけでなく、警察以外を含めた捜査機関が、被疑者を20日間身柄拘束して尋問をする際に、被疑者の権利を保護する措置が行われていないことへの批判である。

 国際連合の人権小委員会や規約人権委員会では、日本に関する人権問題として代用刑事施設問題が取り上げられることが多い。多くの場合、人権小委員会はこの問題に対して懸念を表明しており、規約人権委員会は対日審査・最終見解にて、代用監獄制度の廃止を勧告している。