ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第1618話 大仏廻国

序文・聚楽園大仏

                               堀口尚次

 

 『大仏廻国(かいこく)』は、昭和9年9月14日に公開された日本映画である。監督は枝正義郎、主演は石川秀道。『大仏廻国・中京編』とも称される。

 映画監督である枝正義郎が東亜キネマから独立し、昭和9年に制作した作品である。「大仏が動き出し、名古屋を巡り歩く」という題材を大規模なトリック撮影で描いた映画作品で、日本映画では初めて「着ぐるみとミニチュアで巨大なキャラクターを表現した作品」とされる。制作にあたっては、枝正が前年に公開された『キング・コング』に影響を受けたと言われる。映像については、大小数十個の大仏を作り実景と模型を自由にモンタージュして場面の遠近に不自然を感じさせないように撮影したとされ、「グラスプロセス・スクリンプロセスなど、日本映画界空前の技術を開拓して観るものに映画の持つ奔放さを十分味はせるなど、大仏廻国の成功は一に日本映画界一歩の前進と確信」と評価されている

 内容について、『新愛知』では「従来の映画道を無視しているなど大胆」「とにかく面白いスペクタクル映画」と紹介されている。『名古屋新聞』では「『キング・コング』などと同日の談ではない」と手厳しい評もある。当時はトリック撮影を駆使した作品という認識と共に、仏教映画とも捉えられており、「安易な絵解き映画では段々受けなくなった為に新しい作品は、例へば『大仏廻国』の如くにトリック撮影で興味の変化を狙って来た」とある。映画の舞台となった名古屋市では映画館が満席になるなど好評だった。フィルムは戦災で焼失したため、現存していない。

 愛知県知多郡上野村〈現在の東海市〉の聚楽園大仏が衆生済度のため日本全国を行幸するというもの。名古屋市内〈真宗大谷派名古屋別院、本願寺名古屋別院、大須観音、名古屋城〉を巡り歩く。犬山城を枕に一睡した大仏は真清田神社を参詣した後、再び名古屋市内に戻り名古屋公会堂、名古屋市議会、松坂屋、覚王山、鶴舞公園、名古屋市公会堂などを巡り、三河の知立八橋や常福寺の大仏と対面する。大仏は地獄と極楽を巡った後、雲に乗り東京に向かう。

【私見】2018年に公開されたリバイバル映画『大仏廻国 The Great Buddha Arrival』を観たがピンとこなかった。只、筆者の地元である名古屋鉄道の聚楽園駅や、現在の聚楽園大仏が映し出される場面は親近感が湧いた。