ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1623話 千両役者と大根役者

序文・歌舞伎役者

                               堀口尚次

 

 千両役者とは、江戸時代に歌舞伎役者の中でも、特に人気を誇り、大衆を魅了した者を表した語。彼等は、1年に千両を超えるほどの高い給金を得た事から、こう呼ばれるようになった。歌舞伎の演目には、千両役者のみで配役される演目も存在したという。現在では、プロスポーツ選手のうち、抜群な技能で観衆を沸かせる者のことをたとえて「千両役者」と呼ぶこともある。対義語は大根役者。初代芳澤あやめ、二代目市川團十郎の両人が最初の千両役者といわれ、二代目團十郎が享保6年給金千両を得たことが千両役者の誕生といわれる。芳澤あやめは千両役者以上の格であったとも言われる。

 大根役者とは、演技の拙い役者や俳優を批判する芸能用語。そのような演技の下手な役者を「大根」や「三文役者」と言う場合もある。大根と役者をかけた理由にはいくつかの説がある。大根は食材として利用範囲が広く、どのような調理を行ってもめったなことでは食中りせず、大量に食べても消化を促進する成分を含み殺菌作用があり漢方薬としても用いられることから腹をこわすことがない。食中りすることを食べ物に中ると表現することから大根はあたることがない。役者が何かの演目や配役でヒットし、人気が出て成功することをあたると表現することから、役者として当たらない、または当たりのとれないことをかけたとする説。何かしらの理由で役者が演目の配役を外されることを舞台が観客席よりも高い位置にあったことから下ろすと表現する。演技の下手な役者は観客動員数を左右することで演目の興行成績にも影響し、早々に舞台から下ろされることが通例である。このことから役者を下ろすことと大根の簡単な調理法として卸金(おろしがね)を用いてすり砕く大根おろしの卸すをかけたとする説。演技が下手なために人の役まで至らず、馬の前足・後ろ足を演じ、馬の脚が大根を連想させたとする説。役者の付き人や予備の役者を「ダイコウ」と呼び、訛ってダイコンとなったとする説。大抵の大根の品種は中身が白いことから、技量が乏しく表現力に欠けた役者や俳優の演技は素人同然である。このことから、白いのしろと素人のしろをかけたとする説。演技の下手な役者は白粉(おしろい)を多用することから、白いのしろと白粉のしろをかけたとする説。演技の下手な役者が舞台に出ると場が白けるとすることから、白いのしろと白けるのしろをかけたとする説。