ホリショウのあれこれ文筆庫

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第320話 ツベルクリンとBCGの響き

序文・このBCGが目に入らねぇ~か!

                               堀口尚次

 

 ツベルクリンとは、結核菌感染の診断に用いられる抗原である。日本でのツベルクリン反応検査は、ツベルクリン溶液皮内投与の48時間後の接種部位の発赤の直径を測定して、結核感染を診断する方法で、100年以上の歴史がある。明治45年、福島県岡山県の教員に結核検診が行われた際に、ツベルクリン反応検査が用いられたとされる。

 BCGはフランス語の Bacille de Calmette et Guérin の略で、ウシ型結核菌の実験室培養を繰り返して作製された細菌、および、それを利用した結核に対する生マクチン〈BCGワクチン〉のこと。本来は前者にあたる細菌そのものを指す語であったが、一般社会や医学分野では後者を単に「BCG」と呼ぶことが多い。

 昭和26年、結核予防法が施行となり、法律による経皮(けいひ)接種が開始された。ツベルクリン反応検査の皮内(ひない)注射を行い、陽性以外の〈陰性や疑陽性の〉反応の場合、経皮接種が行われた。接種時期は、幼児期、小学生、中学生の3回であった。平成17年の結核予防法改正により、接種時期は生後6ヶ月未満〈生後3ヶ月以降を推奨〉の1回となり、ツベルクリン反応検査なしで接種することとなった。

 方法として、昭和35年代から管針法直径2センチくらいの円の中に針が9本あるスタンプ状の管針と呼ばれる接種器を上腕部に2回押し付けて行う方法が採用されている。接種後は接種部位が赤く腫れた状態になり、徐々に痂疲(かひ)化し、やがて瘢痕(はんこん)化する〈経過や変化する刺入部の数や程度には個人差がある〉。

 この瘢痕は、時間の経過とともに退縮するが、完全に消えることはなく、瘢痕が一生残ることになる。類似のデバイスを使用したBCGワクチンの皮内接種は、日本やイギリス、アメリカなどでも普及しており、局所の炎症や潰瘍を軽減する効果があるとされる。接種器の形・接種の仕方から、俗に「はんこ注射」や「スタンプ注射」などと呼ばれている。

 私は、幼少時にツベルクリン反応検査も受けているので、この「ツベルクリン」という言葉と「BCG」という言葉の響きに懐かしさすら覚える。

 過日YouTube志村けんのコントを観ていたら、怒った殿様にふんした志村が、腕をまくって「このBCGが目に入らねぇ~か!」とやってた。