ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1035話 源三位こと「源頼政」

序文・源氏の長老

                               堀口尚次

 

 源頼政は、平安時代末期の武将・公卿・歌人。兵庫頭(ひょうごのかみ)・源仲政の長男。清和源氏としては初めて従三位に叙せられた。後世においても、源三位(げんさんみ)の通称が伝わる〈同時代的に「源三位」と称された人物は頼政に限らない〉。また、父と同じく「馬場」を号とし馬場頼政ともいう。

 保元の乱平治の乱で勝者の側に属し、戦後は平氏政権下で源氏の長老として中央政界に留まった平清盛から信頼され推挙により、晩年には武士としては破格の従三位に昇り公卿に列した。

 しかし、平家の専横に不満が高まる中で、後白河天皇の皇子である以仁王と結んで挙兵を計画し、諸国の源氏に平家打倒の令旨を伝えた。計画が露見して準備不足のまま挙兵を余儀なくされ、そのまま平家の追討を受けて宇治平等院の戦いに敗れ自害した〈以仁王の挙兵〉。

 古典『平家物語』には鵺(ぬえ)と呼ばれる怪物退治の説話が記されている。それによると、近衛天皇の御世、帝が毎晩何かに怯えるようになった。その昔、帝の病平癒祈願のため、源氏の棟梁・源義家が御所にあがり、「陸奥守、源義家!」と叫んで弓の弦を三度鳴らしたところ病魔が退散し、帝の容態はみるみる回復した。そのため此度も武士を警護につけるがよかろうということになり、同じ源氏の一門で武勇の誉れ高かった頼政が選ばれた。そして深夜、頼政が御所の庭を警護していたところ、艮(うしとら)の方角〈=北東の方角〉よりもくもくと黒雲が湧き上がり、その中から頭が猿、胴が狸、手足が虎、尾が蛇という「鵺」と呼ばれる怪物が現れた。頼政は弓で鵺を射、駆けつけた郎党・猪早太(いのはやた)が太刀で仕留める。その後、頼政は仕留めた鵺の体をバラバラに切り刻み、それぞれ笹の小船に乗せて海に流したという。

 現存する平安期の日本刀に「獅子王」の号が付けられた太刀があり、この鵺退治の功により朝廷より頼政に下賜されたものである、との伝承がある。

 また、現在愛知県名古屋市にある徳川美術館が所有している香木の蘭奢待(らんじゃたい)のかけらは、頼政獅子王の太刀を下賜された際に同時に拝領したものであるという。