ホリショウのあれこれ文筆庫

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第358話 サカキとシキミ

序文・神前と仏前

                               堀口尚次

 

 サカキは、モッコク科サカキ属の常緑小高木。日本神道においては、神棚祭壇に供えるなど神事にも用いられる植物古来、植物には神が宿り、特に先端が尖った枝先は神が降りるヨリシロとして若松やオガタマノキなど様々な常緑植物が用いられたが、近年は身近な植物で枝先が尖っており、神の依り代にふさわしいサカキやヒサカキが定着している。家庭の神棚にも捧げられ、月に2度、1日と15日に取り替える習わしになっている。神棚では榊立を用いる。

サカキは神仏に捧げる常磐木の代表樹で、結婚式、安産祈願、お宮参り、七五三などの祝い事の際に、神へ奉納する玉串に使われる。神社では、サカキが供花とされ、境内にサカキがあると、小枝におみくじが結ばれるのを見かける機会も多い。

 シキミは、マツブサ科シキミ属の常緑小高木。アニサチンなどの毒を含み、特に猛毒である果実が中華料理で多用される八角に似ているため、誤食されやすい危険な有毒植物である。ときに仏事や神事に用いられ、しばしば寺院墓地に植栽されている。シキミはしばしば仏前や墓前に供えられる 〈特に関西地方〉。また精油を含んだ葉や樹皮は、抹香や線香の原料として利用される。これらは、シキミが有毒であり独特の香りをもつため、邪気を払う力があると考えられていたことに由来する。また古くは、遺体を土葬した墓の周りにオオカミなどの野獣が嫌うシキミを植えることで、屍を守ったともされる。

 静岡県富士宮市大石寺が総本山の、日蓮大聖人の仏法を教えとする日蓮正宗では、シキミが特に重要視されている。日蓮正宗の経典である「法華経」には、「木樒(しきみ)」としてシキミについて説かれていることから、多くの宗教がお墓や仏壇に花を供える中、日蓮正宗では花ではなくシキミを供え色花がその美しい色を変えやがて散ってしまうことを無常と説き、シキミは常に緑が美しい常緑樹であることから、日蓮大聖人の過去世・現世・未来世、さらに遠い未来世にまで渡って変わらない命を意味する「常住不変」であることも解いてる。そのため日蓮正宗の葬儀では、来世に旅立つ仏となった人に永遠の命るため、祭壇に色とりどりの花は使わずに、シキミだけで飾り付ける。

サカキ

シキミ