ホリショウのあれこれ文筆庫

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第359話 生活保護「扶養照会」

序文・民法の義務が皮肉な結果に・・・

                               堀口尚次

 

 生活保護受給の審査に「扶養照会」なる存在があることを、テレビのドキュメンタリー番組で知った。その問題点について調べてみた。

 生活保護は、国や自治体が「健康で文化的な最低限度の生活」を日本国民に保障するためとして設けている公的扶助制度。日本国憲法第25条や生活保護法の理念に基づき、生活に困窮する国民に対して、資力調査を行いその困窮の程度によって、要保護者に必要な扶助を行い、最低限度の生活を保障するとともに、自立を促すことを目的とする。平成24年から生活保護への総合的な見直しが決まり、不正受給への厳格な対処、生活扶助や医療扶助等の給付水準適正化、保護世帯の就労促進、就労困難者への別途支援制度構築、正当な理由なく就労しない者への厳格対処することとなっている。

 保護の実施機関は、知れたる扶養義務者が民法の規定による扶養義務を履行していないと認められる場合において、保護の開始の決定をしようとするときは、厚生労働省令で定めるところにより、あらかじめ、当該扶養義務者に対して書面をもつて厚生労働省令で定める事項を通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが適当でない場合として厚生労働省令で定める場合は、この限りでない。①当該扶養義務者が以下のものである場合・被保護者・社会福祉施設入所者・長期入院患者・主たる生計維持者ではない非稼働者(いわゆる専業主婦・主夫等)・未成年者・概ね70歳以上の高齢者など②要保護者の生活歴等から特別な事情があり明らかに扶養ができない(以下、具体例)。・当該扶養義務者に借金を重ねている。・当該扶養義務者と相続をめぐり対立している等の事情がある。・縁が切られているなどの著しい関係不良の場合。なお、当該扶養義務者と一定期間(例えば10年程度)音信不通であるなど交流が断絶していると判断される場合は、著しい関係不良とみなしてよい。等③当該扶養義務者に対し扶養を求めることにより明らかに要保護者の自立を阻害することになると認められる者・夫の暴力から逃れてきた母子・虐待等の経緯がある者 等 以上の条件に該当してると判断された場合、生活保持義務関係者(夫婦及び中学3年以下の子に対する親)以外に対する照会は不要となり、生活保持義務関係者に対しては、関係機関等に対する照会のみとなる。民法の「直系血族及び兄弟姉妹は互いに扶養をする義務がある」が手かせ足かせだった。