ホリショウのあれこれ文筆庫

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第863話 玄関の三和土

序文・3種類の材料を混ぜる

                               堀口尚次

 

 三和土(たたき)は、「敲(たた)き土」の略で、赤土・砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り、塗って敲き固めた素材。3種類の材料を混ぜ合わせることから「三和土」と書く。叩き漆喰(しっくい)とも呼ばれる。土間(どま)の床に使われる。

 漆喰とは、水酸化カルシウム消石灰〉を主成分とする建築材料。住宅様式や気候風土などに合わせて世界各地で組成が異なっており独自の発展がみられる建築材料である。漆喰は、水酸化カルシウム・炭酸カルシウムを主成分としており、もとは「石灰」と表記されていたものであり、漆喰の字は当て字が定着したものである。

 土間は、家屋内にあって床板を敷かずに、地面のままか三和土〈漆喰を塗り固めた床〉にした空間。主に玄関近くに設けられ、屋内では靴を脱ぐ習慣がある日本などにおいても、土間は土足のまま屋外と出入りでき、台所や作業場、土汚れがつくもの保管場所などとして使う。

 「敲き土」とは花崗岩安山岩などが風化して出来た土を言う。石灰と水を加えて練ると硬化する性質があるため、そこにこれらの土を混ぜ込んで固める。長崎の天川土、愛知県三河の三州土、京都深草深草土などの叩き土に石灰や水を加えて練ったものを塗り叩き固め、一日二日おいた後に表面を水で洗い出して仕上げとする。

 もともとはセメントがなかった時代に、地面を固めるために使われたとされる。日本では明治期において、既存の三和土を改良した人造石工法〈考案者の名を取り「長七(ちょうしち)たたき」とも呼ばれる〉が、湾港建築や用水路開削などの大規模工事にも用いられた。服部長七〈天保11年 - 大正8年〉は、明治期の日本の土木技術者。既存のたたきを改良し自ら編み出した人造石工法〈長七たたき〉により治水・用水分野の工事において業績を挙げた。広島県宇品港の岸壁工事完成の功績などにより緑綬褒章が授与されている。

 転じて、日本式住宅の玄関における靴を脱がせるためのスペースを「三和土」と呼ぶ。コンクリート打ちやタイル貼りでも「三和土」と呼ぶことがある。因みに「犬走りとは、垣と溝の間や土手の斜面に設けられた細長い通路や平地部分。犬が通れるくらいの幅しかないという意味合いから呼ばれる。