ホリショウのあれこれ文筆庫

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第549話 なまはげ

序文・神の使い

                               堀口尚次

 

 なまはげは、秋田県の男鹿(おが)半島周辺で行われてきた年中行事、あるいはその行事において、仮面をつけ藁の衣装をまとった神の使い来訪神を指し、 200年以上の歴史を有する。「男鹿のナマハゲ」として、国の重要無形民俗文化財に指定されているほか、「来訪神:仮面・仮装の神々」の一つとしてユネスコ無形文化遺産に登録されている。異形の仮面をつけ、藁などで作った衣装をまとった「なまはげ」が、家々を巡って厄払いをしたり怠け者を諭したりする。

 男鹿市真山神社では、なまはげが登場するなまはげ柴灯(せど)まつりを神事と位置付けている。なまはげと同様の行事は日本各地に広く分布する。その中でも、特になまはげは、圧倒的な知名度を得て、秋田県の記号になるまでに至った。その訴求力の大きさから、秋田県の観光PRに用いられるのは勿論、秋田県に関連する私企業でもモチーフにされたり、秋田県関連の物販・飲食店でのオーナメントや余興の1つとされたりして、頻繁に用いられている。 

 「なまはげ」は怠惰や不和などの悪事を諌(いさ)め、災いを祓いにやってくる来訪神である。かつては小正月の行事だったが大晦日の行事となり、年の終わりに、大きな出刃包丁〈あるいは鉈〉を持ち、鬼の面、ケラやミノのような用具、ハバキをまとって、なまはげに扮した村人が家々を訪れ「泣ぐ子(ご)は居ねがー」「悪い子(ご)は居ねがー」と奇声を発しながら練り歩き、家に入って怠け者や子供、初嫁を探して暴れる。家人は正装をして丁重にこれを出迎え、主人が今年1年の家族のしでかした日常の悪事を釈明するなどした後に酒などをふるまって、送り帰すとされている。最後は「へばなー元気にしろよ〜」と言って出ていく。

面は、本来は丹色〈赤〉に塗ったが主で、木の皮や木製だったが、近年ではこれにかわり竹ザルを台材にした張り子や、ボール紙製など様々である。藁衣装はケラ・ミノの類と説明されることが多いが、厳密には現地でケデと称する特有の衣装である。

 なまはげは伝統的民族行事であるとともに、東北地方においては幼児に対する教育の手段として理解されている。親は幼児に対し予めなまはげによる強い恐怖体験を記憶させ、そのあと幼児に対し望ましくないとみなされる行為を行った場合、その恐怖体験が再現される可能性を言語的手段によって理解させる。