ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第689話 飛べない海鳥・ペンギン

序文・足の関節が固定されている

                               堀口尚次

 

 ペンギンは、ペンギン目に属する鳥の総称である。ペンギン科のみが現生する。主に南半球に生息する海鳥であり、飛ぶことができない。今では使われることは稀だが、漢字で書くと「人鳥(じんちょう)」「企鵝(きが)〈企は爪先立つの意、鵝はガチョウ〉」という和名もある。

 多くの鳥類は陸上では、胴体を前後に倒し首を起こす姿勢をとるが、ペンギン類は胴体を垂直に立てる。鳥類の多くが飛翔に使う翼は特殊化し、ひれ状の「フリッパー」と化していて飛翔能力を失い水中の遊泳にのみ使われる。首が短く、他の鳥類とは一線を画す独特の体型をしている。

 世間一般では「脚が短い」と思われているが、実際には体内の皮下脂肪の内側で脚を屈折している。関節はこの状態のまま固定されているので、脚を伸ばすことはできない。体外から出ているのは足首から下の部分だけである。成鳥ではほとんど脂肪に隠されており表面上見えないが、生後まもなくの脂肪の少ないペンギンではその骨格がはっきりと見てとれる。

 ラテン語の pinguis〈肥満〉によるという仮説。15世紀後半以降、大西洋を横断したスペインのタラ漁師が、北西大西洋のニューファンドランド島周辺に生息する飛べない潜水性の海鳥であるオオウミガラスをスペインで penguigo〈太っちょ〉と呼んだ。16世紀にこの語が英語に入って penguin となったとする。

 時を同じくして、南半球を探検しペンギンを初めて見たヨーロッパ人は、オオウミガラスに良く似た形態・生態のこれらの海鳥を同じ「ペンギン」の名でよんだという。これらは特に区別せず「ペンギン」と総称され、混同されることも多かった。

 歩幅を小さくし、そろそろ歩く方法を「ペンギン歩き」と呼ぶ。冬季の凍結路面などで安全に歩く手法で、日本のほか、ドイツでも推奨されている。

 それにしても「人鳥」は『言い得て妙』。隠している足があることがまた皮肉にも、ずるがしこい人間を体現している。

 「隠している その手を 見せてみろよ」と歌った人がいたなぁ。