ホリショウのあれこれ文筆庫

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第818話 文金高島田

序文・花嫁に結われる

                               堀口尚次

 

 高島田は、根元を高く仕立てた島田髷〈日本髪において最も一般的な女髷で特に未婚女性や花柳界の女性が多く結った〉の一種。奴島田とも。また高髷(たかまげ)島田や単に高髷とも。

 島田の変形のうちでは比較的早くに誕生し最も格の高いもので、基本的に特に根が高いものは武家の女性に結われたが、町娘や京阪では芸妓遊女にも好んで結われた。現在でも最も根が高い文金高島田(ぶんきんたかしまだ)が花嫁に結われる。普通、高島田は髷の根に巻く丈長の幅の広さで分類する。

  1. 文金高島田:最も根が高く上品な形。現在も花嫁が結う。「文金」とは文字金(ぶんじきん)〈元文小判(げんぶんこばん)〉を指し、この時の貨幣改鋳〈市場に流通している貨幣を回収してそれらを鋳潰(いつぶ)し、金や銀の含有率や形を改訂した新たな貨幣を鋳造しそれらを改めて市場に流通させること〉により物価の急激な高騰を見たことに例えて名付けられた。
  2. 高島田:上流武家の女性が結ったもの。正式な儀式の場には必ずと言っていいほどこれを結う。
  3. 中高島田:やや髷も小ぶりで高島田よりも少し身分の低い未婚の女性が結う。京阪では中流以下の女性にも広く結われた。
  4. 芸妓島田:根元に丈長を巻かないもの。京都の芸妓が改まった場で結う。

 普通武家の娘ならば「高島田」といって髷の根が高い端正な印象の髷を結う。この派生の中でもっとも根が高い形を、同時期に流行した極端に髷の根が高い男髷「辰松風〈文金風とも〉」にちなんで「辰松島田」と呼び、後に「文金高島田」と呼ぶようになる。

 遊女や芸者なら「投げ島田」や「つぶし島田」、「くるわつぶし」など根がずっと低い髷も平たいものを結う。「投げ島田」は髻の根を後ろにかなり下げたもので髷が後ろに投げ出されたように見えるもの。「つぶし島田」は髷の中央がつぶしたようにへこんでいるものをいう。どちらも婀娜(あだ)っぽい妖艶な印象の髷である。島田という名前の由来は、東海道五十三次のひとつ島田宿〈現在の静岡県島田市にあった宿場〉の女郎に由来すると言うものなど諸説ある。