ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1046話 五行思想

序文・自然哲学

                               堀口尚次

 

 五行(ごぎょう)思想または五行説とは、古代中国に端を発する自然哲学の思想。万物は火・水・木・金・土〈七曜(しちよう)=肉眼で見える惑星を五行と対応させた火星・水星・木星・金星・土星と、日→太陽・月→太陰 を合わせた7つの天体のこと の命令〉の5種類の元素からなるという説である。また、5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底に存在する。

 「五行」という語が経典に現れたのは、『書経』の”甘誓”、”洪範”の章であった。甘誓篇の「五行」は五つの星の運行を示すものとする説もあり、五元素を指しているかは不明である。一方、洪範篇の方は火・水・木・金・土であると明言され、「五行」を五元素として見ている。そのため、今現在の意味としての「五行」は洪範篇が最古であるとされている。また、洪範篇では「五行」と五味を関連付けて解釈している。

 戦国時代には、陰陽家の鄒衍(すうえん)〈中国の思想家〉や雑家(ざっか)〈古代中国の諸子百家=中国の春秋戦国時代に現れた学者・学派の総称 の一つ〉の『呂氏春秋』などにより、五行説にもとづく王朝交替説が形成された。漢代には、王朝交替説が緯書などに継承されると同時に、陰陽説と結合して陰陽五行説が形成された。

 元素を5つとしたのは、当時中国では5つの惑星が観測されていたためだったともいう。

 「五」は四方に中央を加えたものであるとされる。それを明確に示したものとして『河図』と『洛書』がある。どちらも中央に「五」が置かれた構造ではあるが、『洛書』の場合は九星図を構成した図となっている。その後も『左伝』に五教・五節〈音楽〉・五味・五色・五声が、『国語』に五味・五色・五声・五材・五官などの言葉が見られる。

私見】因みに、こいのぼりの「吹き流し」の五色や、お寺の五色幕〈お寺に掛かっている五色の垂れ幕のようなもの〉もこの五行思想からきているようだ。