ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1102話 公衆衛生看護婦

序文・沖縄の離島を支えた女性たち

                               堀口尚次

 

 公衆衛生看護婦とは、復帰前の沖縄県で定められた看護資格で、日本本土における「保健師〈旧称:保健婦〉」に相当する。保健師は、日本において、保健師助産師看護師法保助看法〉に基づき、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者。大学や保健師養成校にて所定の教育を受けた後、看護師国家試験と保健師国家試験の両方に合格して得られる国家資格〈免許〉である。

 戦前は本土と同様に「保健婦」と呼ばれ、資格取得方法も同じであった。〈ただし、当時の沖縄県には保健婦養成機関がなかったので、長崎県にあった養成所に公費で入学し、資格を取得した。〉

 沖縄戦後の昭和26年に、琉球列島米国民政府が「看護婦養成学校法〈米国民政府布令第35号〉」「看護婦資格審査委員会令〈米国民政府布令第36号〉」を公布し、公衆衛生看護婦の資格が規定された。

 布令によると、看護婦〈戦前に取得した保健婦資格者も含む〉を対象に養成講習会が開かれ、修了者に資格が付与された。昭和30年からは専門の看護学校が設置された。

 復帰に伴い、公衆衛生看護婦は「保健婦」の資格が付与された。

 昭和26年より離島や僻地などの無医村において駐在制度を実施し、マラリア結核などの感染症対策や母子保健指導に従事し多大な成果を残した

 復帰後も沖縄県の事業として続けられた。なお、地方分権に伴う市町村保健婦の拡充と地域保健法の施行にともない、平成9年3月に沖縄県における駐在保健婦制度は廃止された。

私見】過日NHK番組・プロジェクトXの再放送を観た。米国統治から本土復帰の時に、公衆衛生看護婦が廃止される危機があったという内容だった。現在でもそうだろうが、離島を多く持つ自治体や過疎地を多く持つ自治体にとって、このへき地医療問題は切実であろう。行政サービスがあまねく平等に受けられることは憲法に保障されており、為政者の重要課題のひとつだ。しかしこと離島や過疎地となると、公人だけではまかないきれないことも事実だ。民間に出来る事を拡大するしかない。そしてそこには崇高な志が必要となるのだ。