ホリショウのあれこれ文筆庫

歴史その他、気になった案件を綴ってみました。

第679話 窓際族ならまだましだった

序文・年功序列終身雇用の崩壊

                               堀口尚次

 

 窓際族とは、日本の職場においてか閑職に追いやられた、余剰の社員・職員を指す言葉。安定成長期で円高不況時であった1977年6月の北海道新聞のコラムで製造ラインの管理職から外れて仕事も与えられず窓際に追いやられた中高年層がデスクで新聞を読んだり、外を眺めては時間を潰すという光景を『窓際おじさん』という言葉で載せた。高度経済成長期に終身雇用制が定着すると、能力や人間関係などの理由から年齢に応じた適切なポストを社内に用意できない社員であっても定年まで雇用を続けざるをえないため、大きな会社ほど名ばかりの肩書を与えて実質的な仕事をさせない社員を抱えるようになった。ひだまりの窓際は一見すると管理職の席のようだが、実際には西日が入る上に出入りも不便な悪環境であり、体のよい厄介払いであった。1990年代頃から成果主義の台頭によって終身雇用制が崩れると、窓際に安住することも許されなくなり、社内いじめともなりかねない追い出し部屋での暗黙の退職推奨も行われるようになった。

 追い出し部屋とは、日本の企業や団体において、従業員・職員を自己都合退職〈または懲戒解雇〉に追い込み、会社都合退職させないために配属させる部署、または既属部署から頻繁に呼び出す部屋。「無期雇用の従業員を容易に解雇できない規制」または「割増による退職金の支給」を免れるため、一部の企業で脱法的に設けられる。表向きの名称としては、配属する場合は人材強化センター、キャリアデザイン室など、既属部署から呼び出す場合はコーチングルーム、ワーク・ライフ・バランス相談室などと通称されることがある。後者の「コーチング」や「ワーク・ライフ・バランス」の場合は組織開発と称して面談を外部に委託し、候補者以外の社員も一通り呼び出して対象者を絞り込んでいくやり方がとられることもある。

 退職勧奨とは、事業または事業所における使用者が労働者に退職の誘引をすることをいう。「辞めてほしい」ことを伝え退職を促す行為。「肩叩き」とも言われている。免職〈公務員の場合〉や解雇〈民間企業の場合〉との違いは、退職勧奨はあくまで労働者の自発的な意思による退職を促すという点にある。