ホリショウのあれこれ文筆庫

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第619話 小売業の黒船到来のその後

序文・規模だけでは凌駕できなかった

                               堀口尚次

 

 ウォルマートは、アメリカ合衆国アーカンソー州に本部を置く世界最大のスーパーマーケットチェーンであり、売上額で世界最大の企業である。ウォルトン一族による同族経営企業〈ファミリー・ビジネス〉として知られており、2019年に発表された「グローバル・ファミリー企業500社ランキング」によれば、ウォルマートは世界の同族経営会社の中で世界一の規模だと評価されている。

 創業者サム・ウォルトンが、1962年に最初のウォルマート・ディスカウント・シティーを、アーカンソー州ロジャーズに開いた。その後様々なフォーマットを展開している。EDLP〈エブリー・デイ・ロウ・プライス=毎日安い〉を掲げ、低価格、物流管理、コスト削減などを推し進め急速に成長し、世界最大の売上げを誇る企業となった。現在、世界15か国に進出して事業展開している。

 アメリカ合衆国においては、個人商店〈小規模商店〉や地元資本の小規模スーパーマーケットしか存在しない小規模な都市に出店し、安売り攻勢で地元の競合商店を次々と倒産、廃業に追い込んだ挙句、不採算を理由に撤退するという形〈いわゆる焼畑商業〉で地元の経済を破壊する事例、いわゆる買い物難民の発生が相次いだため、進出計画を反対される案件が相次いでいる。

 従業員の労働条件の悪さ〈いわゆるブラック企業〉も有名であり、低賃金の非正規雇用従業員を多く採用する一方、正社員の採用には消極的で労働組合がないうえ、組合を結成する動きがあれば社員を即刻解雇するなどの不当労働行為が後を絶たない。

 2002年に、バブル期のファイナンス事業の失敗で解体に追い込まれたセゾングループのスーパーマーケット、西友と包括的業務・資本提携を結び日本進出を果たした。巨人ウォルマートの日本上陸は『黒船到来』と大騒ぎになった。しかし日本の商売に馴染めなかった黒船は20年もたたずに撤退することになった。フランスの大手カルフールも同じく撤退している。

 日本にはGMS〈ジェネラル・マーチャンダイズ・ストア〉という総合スーパー〈ダイエーイトーヨーカドージャスコなど〉が根付いており、欧米の巨大資本は、それとの差別化に失敗したようだ。しかし日本のGMSも過渡期を迎えており、テナント賃貸料で賄う不動産業的な側面が問題視されている。