ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1633話 錫杖

序文・シャクシャクという音

                               堀口尚次

 

 錫杖(しゃくじょう)は、遊行僧が携帯する道具〈比丘十八物〉の一つである杖。梵語ではカッカラといい、有声杖、鳴杖、智杖、徳杖、金錫ともいう。

 銅や鉄などで造られた頭部の輪形に遊(ゆ)環(かん)が4個または6個または12個通してあり、音が出る仕組みになっている。このシャクシャク錫々という音から錫杖の名がつけられたともいわれる

 仏教の戒律をまとめた書である『四分律』『十誦律』などによれば、この音には僧が山野遊行の際、禽獣や毒蛇の害から身を守る効果があり、托鉢の際に門前で来訪を知らせる意味もあるという。教義的には煩悩を除去し智慧を得る効果があるとされる。

 錫杖の長さは通常170センチメートル前後であるが、法会、儀礼の場で使われる梵(ぼん)唄(ばい)作法用の柄の短いものがある〈手錫杖〉。

 仏像では地蔵菩薩などが持物(じもつ)として持つことがある。

 日本の武道団体である少林寺拳法では、錫杖を武器としても用い、錫杖伝〈金剛伝〉と言う。

 修験者〈山伏〉の道具として、ホラ貝と共に馴染みであり、携行具として楽器的に使用された〈山伏祭文〉。その後徐々に俗化し、デロレン祭文→現在の江州音頭に継承されている。現在は先端部の金属のみを持って振ることが多い。

【私見】過日、とある慰霊祭に出席した際の読経の後の説法で、和尚は「錫杖で強く地面を叩き、遊環の音や振動で動物〈昆虫も含む〉たちを寄せ付けないという効果もある。これは仏教で大切な教えである『不殺生』に通じている」と言われていた。弘法大師が右手に持っている法具『五鈷杵』は、元々は猛獣を撃退するための武器だと読んだことがあったが、猛獣を殺傷するのではなくあくまでも撃退が目的なのだろう。近年では熊の出没が社会問題化しているが、熊よけ鈴も錫杖の遊環と同じ効果を発揮するという。願わくば人間も熊も不殺生の教えに従いたいが、そうもいくまい。