ホリショウのあれこれ文筆庫

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第733話 サイフォンの原理

序文・摩訶不思議

                               堀口尚次

 

 サイフォンとは、隙間のないを利用して、液体をある地点から目的地まで、途中出発地点より高い地点を通って導く装置であり、このメカニズムをサイフォンの原理と呼ぶ。

 何らかの液体を、高い位置にある出発地点と低い位置にある目的地点を管でつないで流す際、管内が液体で満たされていれば、管の途中に出発地点より高い地点があってもポンプでくみ上げることなく流れ続ける。この仕組みは液体を鎖に模して、鎖が出発地点より高い位置にある滑車を経由してもう一方へと移動するモデルによっても説明される。

 管内が液体で満たされているときには管内の静圧について考えると、出発地点〈タンクの水面〉における静圧は目的地点における静圧よりも液柱の高さの差分にかかる重量分だけ高くなり、この圧力差を駆動力として液体は目的地点へと流れる。 途中、どれくらい高い地点を通ることができるかは大気圧および液体の蒸気圧と密度による。最高地点において管内の圧力が液体の蒸気圧に近づくと液体はキャビテーション〈空洞現象〉を起こしはじめ、発生した気泡が重力による圧力差を吸収してしまうことから、気泡が増加すればいずれサイフォンは停止する。1気圧下において液体の密度だけを考えると、水ならば出発地点から最高約10メートルの高さを通るサイフォンを作ることができ、水銀の場合は約76センチメートルのサイフォンが作成可能であるが、実際は溶存気体もあるためにキャビテーションの開始はより早い。水の場合、7メートルから8メートルが実用上の限度とされる。

 サイフォンを構成する管に特別な細工は必要ないが、管を液体で満たすまでにポンプが必要になる。管の大半に最初から液体が充填されていれば、管の出口を塞ぎ、気密〈水密〉を保ったまま元の液面より低くすれば、始動にポンプは必要ない。

 身近な利用例として灯油ポンプが挙げられる。例えばポリタンクから暖房器具のタンクへ灯油を移すとき、ポリタンクの液面が暖房器具のタンクの液面より高くなる位置に置いて、始めにポンプを数回操作して管を灯油で満たせばサイフォンの原理によって灯油は流れ続ける。