ホリショウのあれこれ文筆庫

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第889話 交通反則通告制度

序文・青切符

                               堀口尚次

 

 交通反則通告制度とは、自動車または原動機付自転車を運転中の軽微な交通違反「反則行為」につき、反則行為の事実を警察官または交通巡視員により認められた者が、一定期日までに法律に定める反則金を納付することにより、その行為につき公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されないものとする道路交通法第125条から第132条に定められる制度である。反則金制度、あるいは切符の色から青切符制度とも呼ばれる。自動車交通の増大に伴い、道路交通法違反事件の件数が飛躍的に増大し、これが検察庁裁判所の活動を著しく圧迫するに至った為、これらの機関の負担を軽減すべく昭和43年に制度化された

 軽微な交通違反者に対して、すべて刑事訴訟法に基づく刑事手続き〈または少年保護手続き〉を行うことは、現実的に検察・裁判所側の処理能力を圧迫する。また、軽微な違反ですべて正式な刑事手続による処分を課すことが法の主目的ではない。そこで、行政上の観点〈抑止効果による交通違反の減少〉から、軽微な違反については、刑事訴訟法に基づく刑事手続をとる前に、この交通反則通告制度によって行政処分を課すこととし、当該処分を〈自ら選択して〉受けた者については、その反則行為につき刑事手続・少年保護手続を受けることのないようにしたものである。当初は少年には適用されない定めだったが、1970年の「道路交通法の一部を改正する法律」で少年についても適用がされるとなった。

 反則行為について、適応除外に該当する場合を除いて、告知・通告手続がなされないまま、刑事訴追がなされた場合は、刑事訴訟法338条4号に該当して判決による控訴棄却となるので、反則行為について処罰するためには必ず告知・通告の手続を経ることが必要となる。なお、反則金を納めた者は、その反則行為に対する通告処分について、行政不服審査法による審査請求をし、又は行政訴訟で争うことができなくなる。従って、反則行為について争う場合は反則金を納付してはならない。混同されやすいが、裁判の結果「有罪」と判決で言い渡される科料・罰金とは、その法的性質を異にしている。しかし、通告に応じない場合は刑事手続きに移行するという点では、行政上の秩序罰と刑事罰の中間に位置しているとも言える、極めて特殊な制度である。