ホリショウのあれこれ文筆庫

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第779話 公益通報者保護法

序文・密告者ではない

                               堀口尚次

 

 公益通報者保護法は、一般にいう内部告発を行った労働者〈公益通報を行った本人〉を保護する日本の法律である。2004年6月18日公布、2006年4月1日施行。

 内部告発者に対する解雇減給その他不利益な取り扱いを無効としたものである。この法律により公益通報者が保護されることとなる法律を定める他、保護される要件が決められている。

 労働法の一つとして位置づけられ、保護の対象となるのは、当該事業者に従業等する公益通報者となる労働者のみである。ある労働者にとって雇用元はもちろん、労働者派遣の派遣先のほか、雇用元または労働者派遣の派遣先の事業者が、他の事業者との請負契約その他の契約に基づいて事業を行う場合には、当該労働者が当該事業に従事するときにおける当該他の事業者が、例えば刑法に刑罰規定のある犯罪行為を行っているなどの通報対象事実があれば、当該労働者は本法の保護を受ける公益通報が行える。当該契約に通報対象事実は、同法別表にある7の法律のほか、政令にある約400の法律の違反行為のうち、犯罪とされているもの又は最終的に刑罰で強制されている法規制の違反行為〈最初は監督官庁から勧告、命令などを受けるだけだが、それを無視していると刑罰が科されるもの〉である。つまり、あらゆる違法行為が対象となっているわけではないし、倫理違反行為が対象となっているわけでもなく、刑罰で強制しなければならないような重大な法令違反行為に限られる。

 なお、公益通報内部告発には刑事訴訟法における告発としての効果は無い。

 1974年にトラック業界のカルテルを告発したトナミ運輸元社員〈2006年9月20日退職〉が、告発で名前が秘匿されなかった為にトナミ運輸より恨まれ32年間も閑職しか与えられなかったという実例がきっかけになり、同法が設立された。保護されることとなる法令違反行為は7本の法律のほかは「個人の生命又は身体の保護、消費者の利益の擁護、環境の保全、公正な競争の確保その他の国民の生命、身体、財産その他の利益の保護に関わる法律として政令で定めるもの」とされており政令公益通報者保護法別表第八号の法律を定める政令〉で法律名を列挙することとなっている。