ホリショウのあれこれ文筆庫

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第736話 過積載の闇

序文・運送会社と荷主の関係

                               堀口尚次

 

 過積載とは、貨物自動車に規定の積載重量を超えて貨物を積んで走る法律違反行為。また道路路面や道路構造に損傷を与え、周辺に騒音や震動による交通公害を及ぼす。新交通三悪のひとつ。

 構造改革規制緩和により運輸業界への新規参入が容易になった結果、運輸業界では慢性的な過当競争にさらされ、荷物運賃に対して荷主からの強い値引き圧力が加わる。これに対して運送会社側は、やむを得ず人件費の削減や無駄を省くなどの経営努力により、運賃の値引きに応じることが多いが、運ぶ荷物の重量に比例した運賃を支払う契約になっている場合、沢山積んだ方が、より多くの運賃を受け取ることができるので、

険や法律違反と知りながら運転手が積んでしまうことがある

 また、荷主が車両の最大積載量より多い荷物〈積み残し発生〉に対し、もう一台のトラックを追加手配〈当然運賃は別途支払わなければならない〉することを嫌い、1台のトラックに無理やり積ませてしまうという実態がある。また、とにかく運賃は安ければ良いと考える荷主においては、そのような運輸業界の法令違反の実態に興味を持たないことも一因となっている。さらに、近年の燃料代高騰分を運賃に乗せられない状況におかれていることも、過積載増加の遠因となっている。

 既述のとおり、過積載行為は事業者自らの意思によるものの他、荷主発注者の意向によりやむなく行われることも相当多くみられるため、国土交通省では、行政処分の制度の中に荷主〈発注者〉に対して「勧告書」や「警告書」を発出して罰則する制度を設け、荷主主導型の過積載から運送事業者を保護しようとしている。

〈警察としては、事業者が過積載を認識して積ませることを防止する方向に走っている。違反を捕まえて、運転者のみならず事業者の責任も追及し、処罰するようになってきている。これにより、事業者は伝票上も過積載にならないようにきっちり積むようになってきており、鋼材関係では過積載は少なくなってきているといわれている。〉