ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1013話 案山子と鹿威し

序文・害獣対策

                               堀口尚次

 

 案山子(かかし)は、田や畑などの中に設置して、作物を荒らす鳥などの害獣を追い払うための田畑に立てる竹やわらなどで作った人形やそれに類するなんらかの仕掛けである。地域によっておどし、そうずなどさまざまな異称がある。

 「かかし」の直接の語源は「嗅がし」ではないかとも言われる。鳥獣を避けるため獣肉、髪の毛や魚の頭などを焼き焦がして串に通し、地に立てたものもカカシと呼ばれるためである 。これは嗅覚による方法であり、これが本来のかかしの形であったと考えられる。

 古典的には、かかしは竹や藁で造形した人形であることが通例であった。これは機能の面から言えば、鳥獣に対して「人間がいる」ように見せかけることを目的としている。人間が農作業をおこなっているときには鳥獣は近づかないからである。

 現代においては巨大な目玉を模した風船なども用いられる。これは、大きな目を恐れるという動物の本能を利用したものである。

 また、視覚的なものに頼らない手段・道具もあり、これもまたかかしに分類できるかもしれない。近年考案された、爆音を用いて威嚇する装置や、古くは「鹿威(ししおど)し」もその一つと言える。ただしカラスは、実質的に無害なものと認識してしまうので、爆音は一定期間の後に無効になってしまったという観察例もある。

 鹿威しとは、田畑を荒らす鳥獣を威嚇し追い払うために設けられる装置類の総称。かかし・鳴子・添水(そうず)。「鹿脅し」「獅子脅し」「獅子威し」とも書かれるが本来は「鹿威し」である。

 添水(そうず)とは、水力により自動的に音響を発生する装置である。中央付近に支点を設けて支え、上向きに一端を開放した竹筒に水を引き入れる。竹筒に水が満杯になるとその重みで竹筒が頭を下げ水がこぼれて空になり軽くなる。その軽くなった竹筒が元に戻る際に支持台〈石など〉を勢いよく叩き音響を生ずる。

 もともとは鳥獣を追い払う農具であったが、のちに風流としてその音を楽しむようになり、日本庭園の装飾として設置されることが多くなった。

 尚、シカを意味する日本語には、現在一般に使われる「しか」のほかに、「か」、「かのしし」、「しし」などがある。