ホリショウのあれこれ文筆庫

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第71話 日蓮正宗門徒だった戸田城聖の生涯

序文・創価学会戸田城聖について調べてみました。

                               堀口尚次

 

 第二代創価学会会長の戸田城聖(じょうせい)は、明治33年石川県に生れ、大正7年小学校の教員となる。その後、学習塾「時習学館」を主宰、学習参考書の走りともいえる『推理式指導算術』を出版し、100万部を超えるベストセラーとなった。当時の受験生からは「受験の神様」と呼ばれた。

 この頃、後(のち)の初代創価学会会長の牧口常三郎と知り合い、牧口が日蓮正宗法華講員に折伏(しゃくぶく)【広義での勧誘】されると、戸田も牧口と共に日蓮正宗に入信する

 そして、本格的に出版事業に乗り出し、「日本正学館」を設立。牧口の教育理論である『創価教育学体系』や、同郷の作家の小説などの出版を手がける。この『創価教育学体系』の初版が発刊された昭和5年を「創価教育学会」の設立年としている。なお、牧口の著作は「創価教育学会」が出版した。

 戸田は出版業以外に金融業や証券業にも乗り出し、事業家として一定の成功を収める。昭和15年の第2回総会で正式に創価教育学会理事長に就任し、学会の活動を主に財政面で支えた。

 昭和18年日蓮正宗総本山大石(たいせき)寺に呼ばれた牧口と戸田らは、軍部から強制された神札(しんさつ)=お札(ふだ) 受け取りを拒絶する。その後、牧口らは大石寺から登山停止を言い渡される。大石寺では、その教義の上から、神札を謗法(ほうぼう)【仏教の正しい教えを軽んじる言動や物品の所持等の行為】と呼び、祀(まつ)ってはならないとされている。しかし、太平洋戦争の時代にあっては軍部により、神札を押し付けられるという事態が発生し、その対応に苦労した。大石寺大書院が、軍部に中部勤労訓練所として徴用され、訓練所の所長らに神札を祀られるという事件が発生した。大石寺側は宗旨に反するからという理由で抗議をしたが、軍部は受け付けなかった。こうした経緯から、 治安維持法違反・明治神宮に対する不敬罪の容疑で、戸田は牧口と共に逮捕される

 昭和20年服役を終えると、「創価教育学会」を「創価学会」に改め、牧口が会長に、戸田が理事長になる。前身の「創価教育学会」は牧口の創価教育学を中心とした教職員による集まりであったのに対し、「創価学会」は日蓮正宗の信仰を中心に据え広く一般人を受け入れたため、会員数は増大した。

 しかし、事業経営における戦前の主力だった算術書が学習指導要領の全面改正で無意味なものになり、事態打開のために参入した雑誌も売れ行きが低迷するなど、経営は悪化。昭和24年、日本正学館は倒産する。戸田は東京建設信用組合を設立し営業を始めるが、多額の負債があるために今度は大蔵省から営業停止の命令を受け、破綻。昭和25年、戸田は、創価学会理事長を辞任する。同年、大蔵商事を設立し、顧問に就任。

 昭和26年、東京・向島常泉寺で式典を開き、後の大石寺65世法主臨席の下、戸田は第2代創価学会会長に就任する。翌年には「創価学会」は宗教法人となる。

 戸田は、事業家としての経験をもとに創価学会の運営を行った。戸田は就任演説において、7年間で75万世帯を折伏することを目標に掲げ、大規模な布教運動を行った。しかし、強引な勧誘方法は各地で社会問題化した。

 日本全国に創価学会の組織を整備し、創価学会の政治進出を正当化する理論を説き、これは後の公明党の基盤となった。戸田会長時代に機関紙『聖教新聞』が創刊された。昭和29年には国会や地方議会の選挙に学会員を出馬させ、政治進出を果たした。また、日蓮正宗の外護(げご) 【仏道修行の人に修行に必要なものを供給して心身に安穏を与えること】という創価学会本来の目的を果たすべく、大石寺への大講堂の建立・寄贈などを行い、宗門らとも良好な関係を築いた。

 その一方で、牧口が仏法思想にある原因結果の法則と自らの価値論を絡めた「罰論の功徳論」を展開したのに対し、戸田は戦後の荒廃した時宜(じぎ)に沿う形での「生命論」を提唱する。「生命論」は戸田が獄中で得た悟りをもとに発表したもので、創価学会が現代に即した法華経を展開するための核心的な理論となった。酒好きで、しばしば酒を飲んで酔っぱらいながら説法をしていた。不飲酒戒のある仏教であるが日蓮系教団の教義では問題にならない。これを「末法無戒」というが、末法の世には細かい戒律は必要がないという、日蓮宗諸派の教学である。

 戸田城聖は、このようにして今日巨大な組織となった「創価学会」「公明党」の基礎を築いたのだ。但し「政教分離」の問題は、課題として存在している。

 しかしながら「日蓮宗の本山・身延山久遠寺」「日蓮正宗大石寺」「創価学会」「公明党」これら団体の根底に流れているものは、法華経を中心に「南無妙法蓮華経の御題目を唱えた日蓮上人の教えであろう。

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