ホリショウのあれこれ文筆庫

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第70話 江戸幕府の役職と官位

序文・「肥後守(ひごのかみ)」と云えば、小刀の事だが、本来は肥後の国(熊本)の長官という官位でした。

                               堀口尚次

 

 江戸幕府幕藩体制では、将軍の直臣(じきしん)=直属の家臣・直参(じきさん)ともいう として旗本(はたもと)と御家人(ごけにん)がおり、親藩(しんぱん)・譜代(ふだい)・外様(とざま)らの諸大名がいる。旗本や諸藩の大名の家臣は、直臣に対して陪臣(ばいしん)とされた。親藩とは、徳川御三家尾張紀伊・水戸】に代表される将軍家の親戚であり、御一門・御両典【駿河甲府・館林】も含み、徳川姓と葵(あおい)の御紋(ごもん)が許されており、それ以外にも御家門・御連枝など、松平姓と葵の御紋が許されている大名がある。

 譜代とは関ケ原の戦い以前からの徳川家の家臣で、外様とは関ケ原の戦い以降家臣になったもの。

 旗本でも親藩大名でもない徳川御三卿(一橋・田安・清水)という立場もある。これは、御三家より将軍家に近い親戚とされ、御三家と合わせて将軍の世襲対象となりうる。

 幕府の最高位は「将軍」で朝廷から征夷大将軍を賜る。実際の政務を司るのは「老中」であり譜代大名から選出される。「大老」は臨時の最高職。

 「老中」は、「勘定奉行」を差配し、その勘定奉行が「町奉行」を差配した。各町奉行には、数人の「与力」が付き、その与力には数人の「同心」が付いた。この同心が、非公認の協力者としての「おかっぴき」を連れ「御用提灯」を持って市中を取り締まった。十手を持っていたのは、与力と同心である。

 時代劇等でよく出て来る、「お代官様」と云うのは、天領=幕府直轄地の長官であり、旗本が江戸から派遣されて赴任しているものだ。江戸から遠く離れているが、幕府の直参であり、地方の大名よりも官位が高いこともあり、権力を振りかざしたり、豪商らとの癒着があった事も否めない。「越後屋~お主も悪よの~」と云うセリフが悪代官に似合う訳だ。

 おまけ情報として「茶坊主」と云うのは、大名や高級旗本の世話係で、僧侶ではなく身分は武士。最後に、有名な大名の「官職名」を挟み込んだ名前を列挙した。勿論、名誉職であり朝廷から賜った肩書でしかない。

浅野 内匠頭(たくみのかみ)長矩→内匠寮の長官(中央官庁のトップ)

吉良 上野介(こうずけのすけ)義央→上野国の次官(地方の県の副知事)

大岡 越前守(えちぜんのかみ)忠相→越前国の長官(地方の県の知事)

井伊 掃部頭(かもんのかみ)直弼→掃部寮の長官(中央官庁のトップ)

一橋 刑部卿(ぎょうぶきょう)慶喜刑部省の長官(中央官庁のトップ)

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