ホリショウのあれこれ文筆庫

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第225話 日本のチェーンストアの父

序文・チェーンストアは手段であり目的ではない

                               堀口尚次

 

 渥美俊一は、昭和元年生れで東京大学法学部を卒業。学生時代は全国学生運動の中枢で活動。卒業後に読売新聞社に入り経営技術担当記者となる。その後にチェーンストア経営研究団体「ペガサスクラブ」を設立、主宰。

 渥美は、高度経済成長を達成する中でも日本人の生活の豊かさは国際水準から見れば成熟していないと捉え、製造業に比べて立ち遅れていた日本の流通分野を、チェーンストア産業づくりの推進によって近代化し、生活水準の向上を実現することをロマンとして掲げた。私は職業上、このペガサスクラブの研修会に出席した経験があり、先生は「経済民主主義の確立」が必要だと力説されていた事を記憶している。

 設立当初のペガサスクラブの主なメンバーは、ダイエー中内功、イトーヨーカ堂伊藤雅俊ジャスコ〈現・イオン〉の岡田卓也立憲民主党岡田克也の兄〉など30代の若手経営者が中心。会員企業数は急速に伸び、10年後には1,000社を超えた。渥美は、メンバーの経営者を率いて毎年アメリカ視察を行うなど、アメリカの本格的なチェーンストア経営システムを日本に紹介し、流通革命・流通近代化の理論的指導者として、草創期にあった戦後日本を代表する多くのチェーンストア企業を指導した。

 現在のペガサスクラブ会員で有名な企業は、セイユー・マツモトキヨシオートバックスしまむらサイゼリア吉野家・スカイラーク・ニトリなど名立たるチェーンストア企業が目白押しだ。

 「渥美俊一とペガサスクラブの40年の歩み」という日経スペシャル番組の締め括りで、ナビゲーター役の作家が、二つの強い印象を残したと語った「一つは、私たちの最も身近な商(あきな)いという世界を、合理的な仕組みに作り替えることによって、社会を豊かにしていきたいという志(こころざし)であります。もう一つは零細な商店からアメリカの最新の流通業界の第一線まで含めまして、現場を歩き現場を見つめる中で解決策を見い出して行こうという、いわば現場主義の様なものです。現在、経済環境の枠の中で流通業界も大きな試練を向えておりますが、この志と現場主義というものは試練を乗り越える大きな柱と、いつの時代でもなりうるものではないでしょうか。そういう意味で、渥美さんのこれまでの歩みは、私たちの生きた教科書として今目の前にあるのではないでしょうか。」

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