ホリショウのあれこれ文筆庫

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第865話 貧困ビジネス

序文・制度の悪用

                               堀口尚次

 

 貧困ビジネス、通称・弱者ビジネスは、困窮している人の弱みに付け込んで利益をあげる悪質事業。囲い屋〈生活困窮者に対して救済するなどと称して、住居をあっせんする。あっせんした住居を元に、生活保護を申請させる。家賃、弁当代などの名目で、生活保護費の一部ないし全部を交付させるという手法で生活困窮者から搾取をしている。〉などによる保護費の搾取する生活保護ビジネスなど社会的組織であると表向きに標榜しながら、貧困層をターゲットにしていて、かつ貧困からの脱却に貢献することなく、実際には困窮した状態から抜け出せないように固定化しながら不当に利潤を得るビジネスである。

 ネットカフェ、住み込み作業員、住み込み派遣社員〈請負社員〉、ゼロゼロ物件〈敷金と礼金の支払いがともに0円である不動産賃貸物件〉、無料低額宿泊所消費者金融、およびヤミ金融などといった、経済的に困窮した社会的弱者を顧客として利益を上げる事業行為を指す。ホームレス支援や貧困問題にとり組むNPO法人『自立生活サポートセンター・もやい』の事務局長を務める湯浅誠により提唱された概念である。

 「貧困ビジネス」の概念は、「問題がビジネスモデルそれ自体にあるということ」を指し示すためにつくられた。それらのビジネスモデルが問題なのは、違法行為であるからだけではなく、そのシステムが非人間的なありかたを貧困層である当事者たちに強いるからであるという。

 貧困ビジネスを行う企業や団体の多くは「社会的企業」を装っているのが特徴的である。社会的企業は、社会問題〈地球的課題〉の解決をめざした社会変革を通じた社会貢献と企業の利益を両立させることを目的としている。しかし、貧困ビジネスは、「社会問題の解決」などではなく「社会問題の固定化」により利益を上げる、社会的企業の対極にある存在である。

私見】資本主義の市場経済での自由競争は、需要と供給のバランスで成り立っている。貧困ビジネスも需要がなければ成り立たない。しかし、生活保護制度を悪用し、更にその受給者から搾取するなどは言語道断だ。社会的弱者を救済する〈セーフティーネット〉仕組みは、社会主義でない国家の課題だ。ただし、この生活保護受給に関しては様々な問題をはらんでおり、その闇は深い。