ホリショウのあれこれ文筆庫

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第892話 民事介入暴力

序文・ミンボー

                               堀口尚次

 

 民事介入暴力とは、暴力団が当事者としてまたはその代理人として民事紛争に介入し、暴力や集団の威力を背景に不当に金品を得ようとする行為一般を指す。通称ミンボーと呼ばれる。昭和54年12月、警察庁が「民事介入暴力対策センター」を設置した際に作られた造語である。昭和54年当時の警察庁による民事介入暴力の定義は「暴力団又はその周辺にある者が、暴力団の威嚇力を背景にこれを利用し、一般市民の日常生活又は経済取引について、司法的救済が十分に機能していない面に付け込み、民事上の権利者や一方の当事者・関係者の形を取って介入・関与するもの」である。

 その実態は、威力業務妨害・恐喝であるが、刑事事件としての成立要件を満たさない場合、当然の結果として犯罪もない。対策としては弁護士や警察と連携した暴力団追放センターに連絡する事が重要とされる。「民暴」と略すこともある。

 また、特に一般市民を対象として「企業の倒産整理、交通事故の示談、債権取立て、地上げ等民事取引を仮装しつつ、一般市民の日常生活や経済取引に介入し、暴力団の威力を利用して不当な利益を得る」ような民事介入暴力を指して、「市民対象暴力」、さらに、企業を対象として「株主権の行使に名を借りたり、社会運動や政治活動を仮装、標ぼうするなどして合法的な行為を装いつつ、企業活動に介入し、暴力団の威力を利用して不当な利益を得る」ような民事介入暴力を指して、「企業対象暴力」ともいう。

 みかじめ料〈用心棒代〉とは食堂やスナックなどの飲食店に対し、自身が経営に関与する関連会社〈企業舎弟〉とおしぼりや花・植木等のリース契約、あるいは小物アクセサリーやお守り等の販売契約を要求する。拒否した場合は、入り口付近で大声を出し威圧したり、店舗の中に客として入りこみ他の客が来にくくするなどの嫌がらせ行為をすることを暗に示唆する。暴力団対策法の施行前はみかじめ料と称し直接金品を要求していたが、施行後は正当な商取引契約の形をとることも増えたため、契約の事実だけでは刑事的処罰の対象にはなりにくい。