ホリショウのあれこれ文筆庫

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第369話 政令指定都市の課題

序文・権限と役割は違うはず

                               堀口尚次

 

 政令指定都市は、地方公共団体の一つ。法廷人口が50万人以上で、なおかつ政令で指定された市のこと。名古屋市大阪市横浜市などがこれにあたる。地方自治法において、都道府県は市町村を包括する広域の地方公共団体として、事務で広域にわたるものを処理するが、政令指定都市は一般の市町村や中核市と比べて都道府県の権限の多くを委譲される。

 昭和31年に運用が開始された。これに先立つ昭和22年、国は大都市が府や県から独立する特別区制度を設けたが、権限を奪われることになる府県が猛反発、これに代えて権限の一部だけを府県から移す制度として設けられたのが政令市制度であった。指定都市は、条例で区を設けるものとされている。この区は、東京都の特別区〈東京23区の各区〉と区別して、「行政区」と通称される。

 政令指定都市都道府県からの権限の移譲等により、都道府県に準じた権限を行使することが可能で、都道府県との間の手続き等を経ることなく、都市独自の施策を実施することができる。具体的には、県を通さずに直接接触できるようになる。

 通称「区役所」の長は地方公務員であり、当該指定都市の職員の中から市長が任命するのが通例である〈各市の行政組織によるが、一般的に局長クラスまたは部長クラスの役職〉。因みに、東京都の特別区の区長は、選挙で選ばれる政治家である。

 指定都市は各分野につき、完全に独立した行政を担当できるまでの事務移譲を受けるわけではなく、農林行政、防災行政については、ほとんど授権がない。一方で、都道府県と指定都市との間では、一部につき共通する行政を担当することから、両者の間での二重規制、二重行政に陥る可能性が指摘されることがある。法令上、指定都市は、一部の特例措置を除いては、一般の市町村と同列の制度の適用を受けるため、都道府県が市町村の行政を審査する行政不服審査制度に関する事項など、両者の関係についてあいまいな部分もある。新たな法令を制定することを通じ、都道府県に指定都市に対する勧告権を付与し、指定都市内の行政に関する関与権限を弱める案などが提唱される。

 維新の会などは、これらの二重行政を根絶すべく道州制の是非を問いている。