ホリショウのあれこれ文筆庫

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第812話 民生委員と高齢者所在不明問題

序文・核家族化がもたらしたもの

                               堀口尚次

 

 民生委員とは、常に住民の立場に立って相談に応じ、及び必要な援助を行い、もって社会福祉の増進に努める社会奉仕者であり、市町村の区域に配置されている。民生委員法に規定される。地方公務員法第3条第3項第2号に規定する非常勤の委員であり、政令指定都市中核市にあっては市の、その他市町村にあっては都道府県の特別職地方公務員である。

 市町村内の最も小さな区域において、社会福祉に携わるのが民生委員である。民生委員は児童福祉法第16条第2項に基づき児童委員を兼ねるとされている。

なお、民生委員には、民生委員法の定めにより、報酬は支給されない。ただし、経費は支給される。民生委員はその職務に関して、都道府県知事などの指揮監督を受ける。市町村長は、民生委員に対し、援助を必要とするものに関する必要な資料の作成を依頼し、その他民生委員の職務に関して必要な指導をすることができる。

 高齢者所在不明問題とは、平成22年以降において、多数の高齢者が公的記録上〈戸籍上〉では存在しているが、実際には生死または実居住地などの確認が取れなくなっていることが発覚した社会問題。認知症等が原因の一時的な失踪や徘徊を指すものではなく、永続的な失踪かつ親族等による失踪届や、失踪後の死亡宣告等の書類上の処理がなされていない特殊な状況の高齢者問題。

 平成22年7月29日、東京都足立区に住民登録をしていた都内男性最高齢〈111歳〉の白骨化遺体が発見され、刑事事件〈死亡後約32年経過とされる、年金給付の不正受給容疑〉となった。その後東京都は、100歳以上を対象にした調査を開始。その結果、都内最高齢の113歳の女性が所在不明であった。これらがきっかけで、全国各地で100歳以上を対象にした調査を開始した結果、多くの所在不明の高齢者が発覚した。これも民生委員の人手不足が原因の一つである。

私見】戦後特に核家族化が進み、親と同居する家族〈基本的に長男〉が減少した事は、少子高齢化がもたらした自明の理である。進駐軍がくれた戦後民主主義は、日本の家族制度にまで影響をもたらしたのだろうか。社会生活が高度成長する過程で見落とされてきたものの一つに、この核家族化問題がある。地元の各種祭の継承、先祖代々のお墓の管理等、問題は山積している。