ホリショウのあれこれ文筆庫

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第703話 マッカーサーが作らせた警察予備隊

序文・憲法9条→警察予備隊自衛隊

                               堀口尚次

 

 警察予備隊は、日本において昭和25年にGHQポツダム政令の一つである「警察予備隊令」〈昭和25年政令第260号〉により設置された準軍事組織。昭和27年に保安隊〈現在の陸上自衛隊〉に改組された。

 日本の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するため、国家地方警察及び自治体警察の警察力を補うものとして設けられた。その活動は警察の任務の範囲に限られるべきものであると定められていたが、実質的には対反乱作戦を遂行するための準軍事組織もしくは軍隊であり、装備はM1ガーランド小銃、戦車〈当時の呼称は言い換えにより「特車」〉など重武装であった。組織としては総理府の外局扱いとされ、警察とは独立して内閣総理大臣の指揮を受けた。

 昭和25年に勃発した朝鮮戦争において、アメリカ軍は日本駐留部隊を朝鮮半島に出動させることとなった。その時点で日本駐留陸軍部隊は第8軍の4個師団〈第1騎兵・第7歩兵・第24歩兵・第25歩兵〉であり、九州駐留の第24歩兵師団は直ちに移動を開始している。その後、7月上旬には第8軍全部隊が朝鮮半島に移動することとなり、日本における防衛兵力・治安維持兵力が存在しないこととなった。

 マッカーサー元帥は吉田茂首相に対し、「日本警察力の増強に関する書簡」を提示した。この書簡においては、「事変・暴動等に備える治安警察隊」として、75,000名の「National Police Reserve」の創設が要望されていた。公表された書簡では左記の表記が採用されていたが、GHQ部内資料である「日本の安全保障諸機関の増強」 においては「警察軍」と称されており、アメリカが第2次大戦前にフィリピンで創設していたフィリピン警察軍、アメリカ軍政庁統治下の南朝鮮で創設していた南朝鮮国防警備隊〈現在の大韓民国陸軍〉のような対反乱作戦部隊を想定していたものと考えられている。

 警察予備隊の創設、および再武装化はポツダム宣言日本国憲法9条に抵触するものであるとして、ただちに極東委員会ソビエト連邦の反発を招いた。また、日本国内でも左派・共産主義者が連携し、国会でも重要な議題となり、最高裁判所違憲訴訟が起こされた。