ホリショウのあれこれ文筆庫

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第1023話 マフィア

序文・ゴットファーザー

                               堀口尚次

 

 マフィアは、イタリアのシチリア島を起源とする組織犯罪集団である。19世紀から恐喝や暴力により勢力を拡大し、1992年段階では186グループ〈マフィアのグループは「ファミリー」と呼ばれる〉・約4,000人の構成員がいる。

 マフィアの一部は19世紀末より20世紀初頭にアメリカ合衆国に移民し、大都市部を中心に勢力を拡大した。1992年段階でアメリカ全土には27ファミリー・2,000人の構成員がいるが、現在マフィアの多くは衰退し、シカゴを拠点とするシカゴ・アウトフィットのみが勢力を維持しているとみられている。

 組織犯罪集団の代名詞的存在であるため、他民族もしくは他地域の犯罪組織も「マフィア」と呼ばれることがある。また、市場における匿名の投機筋を「金融マフィア」などと呼ぶなど比喩的に使用される場合もある。またマスメディアにおいて、メンバーシップが限定的で排他的かつ強力な団結力を持つ組織を「〜マフィア」と形容することがある。軍隊においては軍政などにおける特定の派閥を「〜マフィア」と通称することがある。親子分・兄弟分の契りを交わす儀式があるなど、風習もよく似た類似組織が日本の暴力団・ヤクザである

 マフィアの語源には諸説あり定説は無い。アラビア語採石場を意味するマーハ、空威張りを意味するマヒアスから来たというものである。シチリアは9世紀から11世紀までイスラム教徒のアラビア人が支配しており、支配に反抗した者や犯罪者がしばしば採石場に逃げ込んだという。またイタリアの国語辞典には“シチリア方言で「乱暴な態度」から”と記述がある。

 元々、マフィアという言葉は肯定的な意味で使用されていた言葉であり、「美しさ、優しさ、優雅さ、完璧さ、そして名誉ある男、勇気ある人、大胆な人」という意味で使用されていた。この意味での言葉が初めて公文書に使われたのは1656年パレルモでの異端尋問においてであり、異端とされた者のリストの中にこの言葉が使用されている。

 現在のような秘密結社、犯罪組織を意味する言葉として初めて使われたのは19世紀以降からであり、現代の意味でこの言葉が広く知られるようになったのは1862年に制作された喜劇「ヴィカーリア刑務所のマフィア構成員たち」がパレルモのサンタンナ劇場で上演され大ヒットしイタリア各地で巡演されてからである。